「朝凪」の意味とは?戦艦や季語など詳しく解釈
朝凪は、海の状態を表す言葉ですが、かつて存在した戦時中の日本海軍所有の戦艦の名称として有名です。
更に現在では、俳句における「季語」としても使われる言葉となっています。
目次
- 「朝凪」の意味とは?
- 「朝凪」の読み方
- 「朝凪」とは?(戦艦)
- 季語としての「朝凪」とは?
- 「朝凪」を使った例文
- 「朝凪」の由来
- 「朝凪」の英語
「朝凪」の意味とは?
朝凪の本来の意味は、「朝の海がとても落ち着いている様子」です。
「凪」は風速を表す言葉で、0.2メートルまでの風(ほとんど無風という状態)に対して使います。
「朝凪」とすると、「ほとんど無風な朝」という意味になります。
「朝凪の中、漁に出発した」といったように、海に関係する職業や、海辺に住んでいる人が使うことが多い言葉です。
「ほとんど無風」という意味の言葉ですが、ほとんどの場合で海が絡んだ(波がほとんど立っていないという意味を絡めた)使い方になります。
「朝凪」の読み方
「朝凪」は、「あさなぎ」と読んでください。
「朝」は問題がないとしても、「凪」は少し難しい漢字です。
意味となる「風」とよく似ているので、その「かぜ」と読んでしまうかも知れませんが、「なぎ」だとしっかり覚えておきましょう。
「朝凪」とは?(戦艦)
先にも挙げたように、第二次大戦中に活躍した日本海軍所有の駆逐艦に「朝凪」という名前の戦艦がありました。
進水(製造後、初めて水に浮かべること)は1924年4月21日で、大戦でアメリカ軍の潜水艦からの攻撃によって沈没してしまうまで、歴代22人の艦長が就任するほど長きに渡って活躍しました。
その沈没は1944年5月22日だという記録が残っています。
駆逐艦にはその用途(汎用性)から、それなりのスピードが求められますが、この朝凪には37.25ノットという速力(移動速度)があり、製造当時としてはかなりの評価を受けていました。
1ノットは時速にして852キロとなるので、その時速にすると約69キロです。
1942年に進水された「島風」が、40ノット(約74キロ)を超える速力のある日本海軍最速の駆逐艦とされていますが、それより18年も前に進水した駆逐艦としてはかなりの性能だったことが伺えます。
季語としての「朝凪」とは?
「朝凪」は、俳句の季語として使うこともできる言葉です。
季語には「四季」が設定されており、この「朝凪」は夏の季語の1つとなっています。
意味は一般の解釈と同じで、「朝の穏やかな海の様子」です。
この季語を使った有名な句として、「朝凪や霞みて遠き島一つ」という正岡子規の作品が挙げられます。
また、飯田蛇笏の「うす霧に苑の朝凪ぎ年惜しむ」も有名で、こちらでは「朝凪ぎ」(あさなぎ)と、送り仮名の「ぎ」を付けていますが、そのように使っても問題ありません(俳句や歌で使われる場合に限ります)。
「朝凪」を使った例文
朝凪を使った例文です。
戦艦のことではなく、一般的な意味として使っています。
- 「彼は朝凪の中、サーフィンへと向かって行った」
- 「朝凪と言える時間帯は午前中まで?」
- 「夏にしか朝凪とは表現しないものだ」
「彼は朝凪の中、サーフィンへと向かって行った」
サーフィンが好きな人には、この朝凪は「グレートコンディション」と呼ばれています。
波が風の影響をほとんど受けないコンディションは、サーファーにとって一番望まれるからに他なりません。
それが朝となると、暑さもまだそれほどでもない為、正に理想的なシチュエーションです。
「朝凪と言える時間帯は午前中まで?」
一般的に、この「朝凪」と表現する時間帯は、午前6時頃から9時頃までと考えていいでしょう。
それを過ぎると「朝」とは言えなくなる為、この言葉では表現しません。
ですが、厳密な決まりという訳ではないので、10時くらいまではそう表現する場合もあります。
普通に「朝」と呼べる時間帯までだと大まかに覚えておけばいいでしょう。
「夏にしか朝凪とは表現しないものだ」
季語の上では、確かに夏を表す言葉となっていますが、一般には秋や冬に使っても問題ありません。
よって、この例文で言っていることは間違っている訳ですが、特に季節を表現する言葉と一緒に使われていない場合、まず夏が思い浮かぶ言葉なのは間違いないでしょう。
「朝凪」の由来
朝凪は、「朝」はともかく、「凪」にポイントがある言葉です。
この漢字は、先のように「風」とよく似ており、部首となる「几」(かぜがまえ)の中に「止」なるという字が使われています。
これがこの漢字の由来で、「風が止まる」(ほとんど吹いていない)ことが「凪」と表現され、「朝」にそれが起こっている様子が「朝凪」となっています。
「朝凪」の英語
朝凪に該当する英語表現は、“a morning calm”です。
「落ち着いた朝」という意味になり、これでは「海」の様子は表していませんが、その海も含めた広い意味で英語ではよく使う表現です。
厳密に「朝凪」の意味にしたい場合には、“morning calm on the sea”とすると、「海の様子の落ち着いた朝」となり、そのままの意味になります。
朝凪は、あまり一般には使わない言葉ですが、風情のある表現が求められる時に見聞きすることがあります。
そのような名前の戦艦があったということも合わせて、この機会に覚えておきましょう。