「倒叙」とは?意味と使い方!例文!類語や英語を紹介!「倒叙」と「叙述」の違い
「倒叙」は、ミステリー小説や同ジャンルのドラマでの演出手法を指す言葉です。
アメリカでこの手法によるドラマが大ヒットしたこともあり、日本でも同様の作品がいくつか登場しています。
目次
- 「倒叙」の意味とは?
- 「倒叙」の読み方
- 「倒叙」の言葉の使い方
- 「倒叙」を使った言葉と意味を解釈
- 「倒叙」を使った例文や短文など(意味を解釈)
- 「倒叙」の対義語
- 「倒叙」の英語(解釈)・例文など
- 「倒叙」と「叙述」の違い
「倒叙」の意味とは?
倒叙とは、ミステリー小説やドラマにおいて、犯人側の視点から描かれることです。
このような演出によって大ヒットしたのが、誰でもタイトルくらいは聞いたことがあると思われる「刑事コロンボ」に他なりません。
この「刑事コロンボ」は、毎回(サイドストーリー的な回は除きます)冒頭で犯人が事件(主に殺人)を犯す場面から始まります。
そして、その事件の担当となったコロンボ警部が、自慢の推理力と犯人との駆け引きなどを経て事件の解決に至るという流れになっています。
犯人は最初から分かっているという、ミステリーとしては興醒めとも言える展開ながら、その犯人がいかに捕まらないように考えて行動しているかという描写がとても面白く、今ではミステリーの中のジャンルの1つとして確立していると言っていいでしょう。
「倒叙」の読み方
「倒叙」は、「とうじょ」と読んでください。
先の説明のように描かれたミステリーは、「倒叙で描かれている」と表現されます。
読み方としての問題は、「叙」(じょ)がきちんと読めるかどうかですが、「叙景」(じょけい、風景を文章にしたもの)という言葉や、有名な全国チェーンの焼肉店の「叙々苑」(じょじょえん)などでこの漢字に見覚えてがあれば、それらと同じ読み方です。
この漢字には他の読み方がないので、「じょ」とそのまま覚えてしまいましょう。
「倒叙」の言葉の使い方
倒叙は、その手のミステリーを見掛けた時に使う言葉です。
それ以外の使われ方はしないので、先に挙げた「刑事コロンボ」に代表されるミステリー小説やドラマに対して使ったください。
日本でもその刑事コロンボと同様に、最初にすぐ犯人が分かり、それをどう追い詰めていくかという「古畑任三郎」というドラマがヒットしたのは覚えている人も多いでしょう。
あのようなドラマこそが「倒叙モノ」と呼ばれます。
また、「倒叙」という言葉には、「時間を遡って述べる」という使い方もあり、ミステリー以外で用いられている時にはこちらの意味で解釈してください。
そのような使い方はあまり見掛けませんが、この意味は対義語の項にも絡んでくるので覚えておいてください。
「倒叙」を使った言葉と意味を解釈
倒叙を使った言葉の解説です。
間違えた使い方には注意しましょう。
- 「倒叙ミステリー」
- 「倒叙トリック」
「倒叙ミステリー」
ここまでに挙げてきた、ドラマの「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」がこれに当たります。
その他では、直木賞を受賞した東野圭吾氏の「容疑者Xの献身」が有名です。
この作品は、一作のみで完結となっており、犯人の親子を庇う天才数学者と、その数学者と知り合いの天才物理学者との様々な駆け引きが見所となっています。
「倒叙トリック」
これは、「叙述トリック」(じょじゅつとりっく)の語表記です。
「倒叙トリック」という言葉や表現は存在しないので注意してください。
その「叙述トリック」とは、作者が読者や視聴者を騙すトリックのことです。
いかにも読み手(視聴者)にそうだと思わせておいて、実は全く違う裏があることが後になって分かるのが、この叙述トリックを使って描かれた作品の特徴です。
有名なものでは、綾辻行人氏の「ANOTHER」が挙げられます。
詳しく解説してしまうと、この作品を知らない人がこれから楽しむ際に面白くなくなってしまうので、どのようなトリックなのかという詳細はここでは避けます。
「倒叙」を使った例文や短文など(意味を解釈)
倒叙を使った例文や短文です。
そのような小説やドラマなどに対して使っています。
- 「倒叙」を使った例文1
- 「倒叙」を使った例文2
「倒叙」を使った例文1
「かの松本清張氏も、倒叙モノを書いていると知った」
鉄道を使ったトリックで有名な松本清張氏の作品には、倒叙で掛かれたものも存在します。
「遠い接近」という作品がそれで、戦後直後の日本と朝鮮半島が舞台の本格ミステリーです(倒叙は後半から使われています)。
「倒叙」を使った例文2
「倒叙を使った作品が多くなってきたが、犯人がすぐには分からないからこそミステリーなのだと思う」
これは、倒叙モノのミステリー小説やドラマが増えてきた頃に、散々論議されたことでもあります。
今ではすっかりミステリーのジャンルの1つとして認知されていますが、ミステリーファンの中には、それではつまらないと思っている人も居るのは事実です。
「倒叙」の対義語
倒叙モノとは逆に、最後まで犯人が分からず、それを推理していく作品は「本格」ミステリーと呼ばれます。
よって、厳密な逆の意味ではありませんが、ミステリーの演出手法における「倒叙」の反対は「本格」だと考えていいでしょう。
ミステリーにはその他にも、「変格」と呼ばれるジャンルがあり、犯人はすぐに分かるが、被害者が分からないといったような変則的な演出手法が使われています。
尚、「倒叙」が「時間を遡って述べる」という意味で解釈される場合の対義語は、「叙述」(じょじゅつ)となります。
意味は、「時間の経過通りに述べる」ことです。
これについては下でも解説します。
「倒叙」の英語(解釈)・例文など
倒叙を英語で表記すると、"inverted"が一応それに当たりますが、“inverted mystery”で「倒叙ミステリー」という表現になるので、この形で覚えておきましょう。
- “Columbo is very famas inverted mystery.”
- “This nobel is not an inverted mystery.”
“Columbo is very famas inverted mystery.”
「刑事コロンボは、とても有名な倒叙ミステリーだ」となります。
この作品の原題は、この「Columbo」です。
“This nobel is not an inverted mystery.”
「この小説は倒叙ミステリーではない」と言っています。
“inverted”だけでは、「逆さま」や「倒立(逆立ち)」という意味になってしまうので、“inverted mystery”として使ってください。
「倒叙」と「叙述」の違い
この「叙述」は、上の対義語の項での説明のように、「倒叙」の使い方によっては対義語となる言葉です。
そして、「トリック」と付けて使った時には、「叙述トリック」として説明した意味になります。
この「叙述トリック」が仕掛けられているミステリー作品は、「叙述ミステリー」と呼ばれています。
倒叙は、一般にはミステリー小説のジャンルの1つを指す言葉だと考えておいて構いません。
「時間を遡って述べる」と使っている時には、その場合には前後の文脈からそれだと分かるでしょう。