「惻隠の情」の意味とは?類語、英語や使い方、例文を紹介!
「惻隠の情」という言葉を聞いたことはありますか?読み方もわからない、という方も多いでしょう。
ここでは、「惻隠の情」という言葉について、意味や読みなど基本的な知識から、例文や類語表現まで見ていきますので、ぜひこの機会に一読ください。
目次
- 「惻隠の情」の意味とは?
- 「惻隠の情」の読み方
- 「惻隠の情」の語源
- 「惻隠の情」の英語
- 「惻隠の情」の言葉の使い方
- 「惻隠の情」を使った言葉や意味を解釈
- 「惻隠の情」を使った例文
- 「惻隠の情」の類語や類義表現
「惻隠の情」の意味とは?
「惻隠の情」とは、相手をいたましく思いあわれむこと、同情することや、思いやりの心を意味する言葉です。
「惻隠」という言葉自体に、かわいそうに思うこと、あわれみ、いたむこと、同情、といった意味があり、そのように感じる情、心のことを、「惻隠の情」といいます。
「惻隠の情」の読み方
「惻隠の情」は、「そくいん(の)じょう」と読みます。
「側」「測る」など、「則」という字を使った漢字にはよく見聞きするものもありますが、「惻」という字を見るのははじめて、という方も多いでしょう。
「惻」には「心」を意味する「りっしんべん」がついている、と覚えておくと間違えずに済みそうです。
「惻」にはいたむ、あわれむ、かなしむといった意味があり、「ショク」や「いた-む」の読みを持ちます。
また、ここで使われる「隠」にはあわれむこと、うれえること、といった意味があります。
「惻隠の情」の語源
儒家であった孟子は性善説を唱えましたが、そのうちのひとつである四端説のなかに「惻隠」という言葉が出てきます。
そこには、「惻隠の心は仁の端なり」とありこれは、相手を慮る心、思いやりの心を持ったものこそが、やがては仁(人間にとっての最高の徳とされている)に到達するだろう、という意味です。
ここでは「惻隠の情」ではなく、「惻隠の心」とありますが、この孟子の言葉から「惻隠の情」という言葉ができたといわれています。
「惻隠の情」の英語
「惻隠の情」をそのまま英語にするのは難解ですので、ここでは同情や思いやり、といった言葉を訳していきます。
“compassion”は同情や思いやり、あわれみ、慈悲の心を表す英語ですので、「惻隠の情」とかなり近い意味で使えることが多いでしょう。
また、“kindness”も親切やいたわり、といった意味を持ちますので、親切にすることで相手を思いやる、という場面では使える英語といえます。
「惻隠の情」の言葉の使い方
「惻隠の情」や「惻隠」「惻隠の心」といった言葉は、人の上に立つことになったときにも知っておくと使える言葉ですし、座右の銘として心に刻んでおくこともできます。
日常会話で使う、というよりも、格言などのように心に留めておき、大事な場面で取りだす、という使い方が望ましいのではないでしょうか。
「惻隠の情」を使った言葉や意味を解釈
「惻隠の情」という言葉だけを知っていても、どのように文につなげればいいかわからない、というときのために、まずはフレーズで覚えていきましょう。
- 「惻隠の情を持つ」
- 「惻隠の情を催す」
「惻隠の情を持つ」
家族や恋人、ペットなど、人には大切にしているものがたくさんあります。
それらに対し思いやりの心を持つことを表すときに使うといいでしょう。
また、社会的弱者や自分が勝った試合の相手などに対しても奢らず、思いやる気持ちを持つことが、社会生活の中でとても重要といえます。
「惻隠の情を催す」
「催す」には、人をなんらかの気もちにさせる、といった意味があり、「惻隠の情を催す」ということは、あわれみの気持ちを起こさせる、というような言葉になります。
かわいそうだと思ったりあわれんだり、同情する気持ちを起こさせるものは、「惻隠の情を催す」ということです。
「惻隠の情」を使った例文
では次に例文の中で、どのように「惻隠の情」が使われているのか見ておきましょう。
具体例を見ておくことで理解が深まります。
- 「惻隠の情」の例文1
- 「惻隠の情」の例文2
- 「惻隠の情」の例文3
「惻隠の情」の例文1
「出会った頃はただのかみなり親父だとばかり思っていたが、惻隠の情をこめて叱ってくれていたのだと、ようやくわかった」
若者や子どものためを思い、他人であろうと厳しく叱責してくれる大人というのは今ではあまり見かけなくなりましたが、そこにはすくなからず「惻隠の情」があったのだと思います。
他人との共同生活である社会の中で身につけておくべき教養を、「惻隠の情」から教えてくれる大人の存在というのは、大人になってようやくそのありがたみがわかるものではないでしょうか。
「惻隠の情」の例文2
「ギャンブル好きの亭主ではあったが、年を食って病に蝕まれていく姿を見ていると、惻隠の情を催さずにはいられない」
ここではあわれみからくる思いやりをさす「惻隠の情」だとわかります。
家庭を省みない、子育てに非協力的であるなど、不満を持っていた人に対してでも、このような仕打ちを受けなければならない理由はないのではないか、とあわれむことがあり、そのような場合に「惻隠の情」という言葉は非常によくあてはまります。
「惻隠の情」の例文3
「敗者に対し惻隠の情を忘れずいることが、スポーツマンシップというものだ」
負けた相手を貶めたり、見下したりしているようでは、どんなに優れた技術を持っていても人間的な成長はありません。
スポーツの世界でもっとも重要なのは勝ち負けではなく、それを通してなにを学ぶか、ということを、一流のスポーツマンであればあるほど大事にしているのではないでしょうか。
「惻隠の情」の類語や類義表現
最後に「惻隠の情」の類語表現を見ておきましょう。
ひとつの言葉を調べたときには、あわせて類語などを調べておくと語彙が広がります。
- 「哀憐」【あいれん】
- 「慈悲」【じひ】
「哀憐」【あいれん】
「あいりん」と読みたくなりますが、「あいれん」が正しい読み方です。
あわれみ、かわいそうに思うこと、不憫がること、哀憫を意味します。
「過労からくる居眠り運転だったそうで、巻き込まれた方のことを思うと哀憐の情を抱く」
「慈悲」【じひ】
仏教など宗教的な用語として知っている方も多いかと思いますが、「じひ」と読み、一般的にはなさけやあわれみといった意味で使われています。
主に目上の人から目下の人に対して使われ、いつくしむ、つまり大事にする、という意味の言葉です。
「いつも謙虚で後輩のことも目にかけてくれる態度は、もはや慈悲といっていいほどだ」
「惻隠の情」とは、思いやる心のことだとわかりました。
人間だれしも完璧ではなく、弱点があって当たり前なのですから、それぞれの長所と短所を補い合い、「惻隠の情」をもって接することができれば、だれもが長所を伸ばし、生かすことで多くの喜びを得ることができるのではないでしょうか。