「烏有」の意味・類語【使い方や例文】
「烏有」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
烏が有ると書きますが、これではこの言葉が何を意味しているのかさっぱり分かりません。
「烏有に帰す」という慣用句が時々使われますので、この機会に「烏有」という言葉を覚えておくと良いでしょう。
ここでは、「そんな烏有」という言葉について詳しく解説していきます。
目次
- 「烏有」の意味とは?
- 「烏有に帰す」の意味
- 「烏有」の言葉の使い方
- 「烏有」を使った例文・短文(解釈)
- 「烏有」の英語と解釈
- 「烏有」の類語や類義語
「烏有」の意味とは?
「烏有」という言葉には、「全く無いこと」、「何も存在しないこと」、「架空の」という意味があります。
「烏ぞ有らんや(いずくんぞあらんや)」という言葉が元になっており、これは「何かあるだろうか、いや、何もない」という意味になります。
鳥類の烏(カラス)のことを例えた言葉という訳ではないのです。
- 「烏有」の読み方
「烏有」の読み方
「烏有」の「烏」は、「烏丸(からすま)」や、「烏森神社(からすもりじんじゃ)」などが知られているように、「からす」という読み方には馴染みがありますが、音読みでは「う」と読みます。
「烏有」は、「うゆう」と読まれる言葉なのです。
「烏有に帰す」の意味
「烏有に帰す」という言葉には聞き覚えのある人もいることでしょう。
この言葉は、「全くなくなる」、「すっかりなくなる」という意味を持っており、特に、火災で焼けて何もかも無くなることを表す時に使われる言葉です。
「烏有」の言葉の使い方
「烏有」は、「何もない」、「全くない」という意味の言葉だということを最初に説明しましたが、この言葉の使い方としては、「烏有」の後に「帰す」を伴って「烏有に帰す」という形で使われることが多いといってよいでしょう。
「火災で焼失して何もなくなる」、「全焼して何も残っていない」といったことを表すのが主な使い方です。
「烏有」を使った例文・短文(解釈)
「烏有」という言葉の意味や使い方の説明をしてきましたので、ここでは、「烏有」を使った例文を紹介します。
- 例文1
- 例文2
- 例文3
例文1
「先の震災では、多くの寺社が火災に遭いました。
この地域で最も歴史の古いあのお寺が全焼し、歴史的価値のある品々が烏有に帰したことは大変残念なことですが、人的被害がなかったことは、不幸中の幸いでしょう」
この文章では、「烏有に帰す」という言葉を使って、歴史的価値のある品々が、震災による火災で全て焼けて無くなってしまった、ということを表しています。
例文2
「揚げ物の鍋を火にかけたままその場を離れてしまったために、長年暮らしてきた家が全焼してしまいました。
私の不注意で、家だけでなく、思い出までもが烏有に帰してしまったのです」
この文章では、不注意による火災で家も思い出も全て焼けて無くなってしまったということが、「烏有に帰す」という言葉を使って表されています。
例文3
「乾燥した日が続く冬場は特に、火の元には用心しなくてはいけません。
大切なものが烏有に帰してから悔やんでも遅いのですから」
この文章では、「烏有に帰す」という言葉を使って、火事で家が全焼して全てを失ってから悔やんでも遅いので、乾燥した日が続く冬場は特に、火の元には用心しなくてはいけません、ということを表現しています。
「烏有」の英語と解釈
「烏有」という言葉を英訳する場合、「烏有に帰す」という表現でしたら、「灰、燃え殻」という意味の「ash」という単語を使って、「be reduced to ashes」という言い回しを使うことができます。
又、「何も無くなる」という意味合いになる「come to nothing」が使われることもあります。
「烏有」の類語や類義語
何も無いことを表す「烏有」の類語としては、「存在しない」、「影も形もない」、「跡形もない」などが挙げられます。
又、「烏有に帰す」の類語としては、「灰燼に帰す」という言葉が当てはまるでしょう。
- 「存在しない」
- 「影も形もない」
- 「跡形もない」
- 「灰燼に帰す」
「存在しない」
「何もない」という意味の「烏有」は、「何も存在しない」というように言い換えることが出来ます。
「最初から何も存在していなかったような錯覚を覚えました」、「私の心の中には、邪心など存在していません」、「飲み会で知り合った人の勤務先と、偶然取引を始めることになったのですが、その人はその会社には存在していませんでした」というように使われる言葉です。
「影も形もない」
「烏有」には、「全く無い」という意味がありますので、目に見えるものは影すらもないという意味の、「影も形もない」という言葉に置き換えることができます。
「暑かった夏も終わって、あんなに賑わっていた海の家は影も形もなくなっていました」、「今では影も形もありませんが、その昔、この場所には豪邸が建っていたのだそうです」、「街のシンボルだった桜の古木が、影も形もなくなっていたのには驚きました」というように使われる言葉です。
「跡形もない」
「何かがあった形跡すらない」という意味を持つ「跡形もない」という言葉も、「烏有」の同義語といえるでしょう。
「市民の憩いの場として親しまれていた建物が老朽化を理由に取り壊されてしまい、今では跡形もありません」、「街の外れにあったのどかな公園は跡形もなく消え、流行りの商業施設が出来ていました」、「攻撃を受けた地域には、人が住んでいた気配など跡形もありません」というように使う言葉です。
「灰燼に帰す」
「灰燼に帰す」は、「かいじんにきす」と読みます。
「灰燼」は、「灰、燃え殻」という意味を持つ言葉で、「灰燼に帰す」は、「跡形もなく燃え尽きる」という意味になります。
「大きな火事で灰燼に帰したとされてきた資料が、100年振りに発見されました」、「子供の頃から収集してきた大切なコレクションは、落雷による火災で灰燼と帰してしまいました」、「どんなに見事な城でも、当時の建物は火事に弱く、あっけなく灰燼に帰してしまったものです」というように使われます。
「烏有」という難しい言葉を色々な角度から解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
普段お目にかかる機会は少なく、会話で使われることもほとんどないでしょう。
そんなマニアックともいえる言葉である「烏有」ですが、この機会に覚えて、さり気なく知識を披露してみてはいかがでしょうか。