「お冠」の意味・類語・対義語【使い方や例文】
誰かが「お冠」というと、あまり良い意味でないことは分ります。
自分で使っていて意味が良く分からないのは恥ずかしいでしょう。
一体どんな意味があるのか、何故「冠」なのか等、基本的な意味を紹介します。
目次
- 「お冠」の意味とは?
- 「お冠」の語源
- お冠」の言葉の使い方
- 「お冠」を使った例文・短文(解釈)
- 「お冠」の英語
- 「お冠」の類語
- 「お冠」とご「立腹」の違いはある?
- 「お冠」は死語?使うときの注意点
「お冠」の意味とは?
- 「お冠」の読み方
- 「お冠」の意味:機嫌が悪いこと
- 「お冠」の意味:目上の人が怒っている様子
「お冠」の読み方
「おかんむり」と読みます。
辞書によっては「御冠」と表記することもあります。
「かんむり」は正に頭にかぶる「冠」のことで、語源や由来については後で説明します。
「お冠」の意味:機嫌が悪いこと
はっきりと強い口調で不満や文句を言うのではなく、雰囲気で怒っていることを表します。
表現が柔らかなので「激怒している」よりは軽いイメージです。
何かで気を損ねているけれども、まだ対応次第では機嫌を直して仲直りできるというイメージです。
「お冠」の人は、こちらの方から相手を刺激しない限り攻撃されない可能性が高くなります。
「お冠」の意味:目上の人が怒っている様子
普段は目下の人を可愛がる筈の目上の人が、何かの理由で怒っている状態です。
目下の人が余程のミスや失敗をして、目上の人が立腹してしまうことを意味します。
但し、立場が上ということもあり怒ってはいても普通に仕事はこなしています。
「お冠」の場合は内面で怒っている状態で、怒りに任せて暴れたり他のことが手に着かないというイメージではありません。
「お冠」の語源
- 「冠を曲げる」から
- 権力の象徴から
「冠を曲げる」から
「お冠」は元々「冠を曲げる」を短縮した表現です。
冠とは王冠ではなく、日本で公家が正装した時にかぶっていたものです。
しかし昔の公家の世界にも上下関係のストレスが多く、上役に反抗心を抱く人もいたのです。
そこでその反抗心を「冠を曲げて被る」ということで表現しました。
公家の世界で服装が乱れているのはたいそうなマナー違反で、冠となれば更に非常識度はアップします。
上役が見れば冠を曲げていることで自分に対して不満を持っていることが一目瞭然で分ります。
このことから転じて「腹を立てる」「反発する」という意味で「お冠」と言われる様になったのです。
権力の象徴から
昔から権力がある人は、頭上に載せものをしていました。
王冠だけではなく、動物の羽根や宝飾などを付けて自分が最も目立つ様にして力を誇示していたのです。
そしてその冠を曲げていることで、誰が見てもその権力者が不機嫌であることが分る様に示していました。
最初は「(権力者が)冠を曲げている」と言われていたのですが、強い影響力を持った人物が本気で怒ると周囲に被害をこうむる人が出る恐れがあります。
そこで「曲げる」を取ることにより、激怒するから意味を和らげたものと思われます。
「お冠」が女性や子供にも使われるのはオブラートに包まれた様なイメージがあるからです。
お冠」の言葉の使い方
- ビジネスの場で
- 家庭で
- 育児で
ビジネスの場で
「お冠」はビジネスの場でも使われます。
朝から社長や部長の機嫌が悪そうだけれども、社内の雰囲気を悪くしたくない、皆に余計な不安を抱かせない様にしたい場合に、少しユーモアを含んだ意味で「なんだか社長がおかんむりだ」と言います。
目上の人が怒っているけれども自分にはあまり関係がないという時に、ひとごととして使います。
家庭で
一般家庭で、夫よりも妻の力が強い時に使われます。
夫が妻に「朝早く帰る」と言っておきながら、飲み会に誘われて参加、ごちそうを作って待っていた妻が待ちぼうけをくらうと怒るでしょう。
翌朝妻の雰囲気が明らかにおかしい、これは怒っているに違いないという時に、「妻がお冠でね」と人に言います。
お互い気心が知れた関係ですので、妻に対してどうすれば機嫌を直して貰えるかが分かっています。
それほど大事にならないだろうと思った時に緩い表現として使うのです。
育児で
赤ちゃんが何をしてもぐずる時があります。
言葉がしゃべれないのでどうやっても泣くだけで、親も困ってしまうでしょう。
どうしていいか分からずにあやすだけなのですが、その様な時に「どうしてもお冠だわ」と呟いてしまいます。
単に赤ちゃんが泣いているだけで、決して深刻な場面ではなく、「ぐずる」という意味で「お冠」と言います。
「お冠」を使った例文・短文(解釈)
- 「お冠」の例文1
- 「お冠」の例文2
- 「お冠」の例文3
「お冠」の例文1
「朝から部長がずっとお冠だ」
仕事で朝一番に悪い知らせがあり、それに対して部長がイライラして不機嫌になっているのを見た部下が言います。
部下に対して怒鳴りたい気持ちがあるのですが、怒鳴ったところで解決しないことを知っています。
そこで何かとネチネチ細かいことで小言を言ったり、いつもと同じペースで仕事をしていても「まだかね」と催促する様な態度を取ります。
言葉の語気が粗く、明らかに怒っているのですが自分でコントロールしている状態です。
「お冠」の例文2
「デートをドタキャンしたら彼女がすっかりお冠だ」
仕事でデートをドタキャンしたのですが、彼女としては非常に楽しみにしていたのでしょう。
機嫌を悪くして彼氏に冷たくしている状態です。
社会人ですから基本的に仕事を優先するべきということは分っているのですが、寂しさとショックで怒りの感情が抑えられないのです。
かと言って自分のワガママだということは分っているので、別れを切り出す様なことはできません。
彼氏もそれが分かっているので少し安心してこの様な表現をしているのです。
「お冠」の例文3
「お父さんが珍しくお冠だわ」
家庭では滅多に怒らない優しい父親が、大事にしていた趣味の道具を処分されてしまったり、業者の対応が悪い時などに怒ることがあります。
家族から見て怒っている父親は恐いというよりも珍しい、ユーモラスです。
父親も怒り慣れていないので、仕草がぎくしゃくしているでしょう。
個人の感情を逆なでしない様に周囲が見守る時に「お冠」を使うと緊張が和らぎます。
「お冠」の英語
英語では“crown”には普通にかぶる「冠」の意味しかないので機嫌が悪い時には使えません。
「お冠」と言いたい時には「不機嫌だ」というフレーズを使いましょう。
- “She is cross with you.” (彼女はあなたに怒っている)
- “He is upset.” (彼は不快に思っている)
“She is cross with you.” (彼女はあなたに怒っている)
「be cross」は少し硬い表現で、本当に怒っていることを意味します。
“He is upset.” (彼は不快に思っている)
こちらはアメリカでは良く使う便利なフレーズですが、あまりピンと来ない人も多いでしょう。
“upset”は辞書では「同様する、ひっくり返る」という意味が載っています。
しかし実際には「怒っている」という時に使われるのです。
しかも怒りに任せた“anger”、“rage”ではなく、イライラっとして歯噛みをする様な感情を表します。
こちらの方が「お冠」に近いと言えるでしょう。
「お冠」の類語
- 「ご立腹」【ごりっぷく】
- 「ご機嫌斜め」【ごきげんななめ】
- 「憤慨」【ふんがい】
「ご立腹」【ごりっぷく】
腹を立てることで、詳しい意味は以下に紹介します。
「ご機嫌斜め」【ごきげんななめ】
機嫌が悪いことを意味します。
本来ならば真っ直ぐなものが斜めになることで、普段とは違う感情を表します。
「憤慨」【ふんがい】
「激怒」よりも意味が柔らかく、あまり表に出さずに内面で怒っている状態を意味します。
「お冠」とご「立腹」の違いはある?
「お冠」は不機嫌になり、ネガティブな感情にとらわれることです。
「ご立腹」は純粋に何かに対して腹を立てて怒ることです。
昔から日本では腹には「虫」がいて、感情をコントロールすると信じられていました。
「虫の居所が悪い」「虫が好かない」など、その時の感情を表す言葉も多くあります。
腹を立てるというのは普段平静な腹の虫が立ち上がる程のことで、強い怒りの気持ちを表します。
「ご立腹」は「お冠」よりもより深刻な感情を意味するものです。
「お冠」は死語?使うときの注意点
- 本人に聞かれないこと
- 自分が無関係の時のみに使う
本人に聞かれないこと
「お冠」は人が怒っている時なのに軽い表現であることから、本人が聞けば余計に機嫌を悪くすることがあります。
特に会社で上司のことを言っている時には、絶対に本人に聞かれない様にした方が良いでしょう。
自分が無関係の時のみに使う
自分が当事者で相手を怒らせているのに相手に対して「お冠」と言うと、非常に責任感のない言い方になります。
会社だと仕事に対する姿勢を疑われてしまうので気を付けましょう。
まったく自分が関係していない時、或いはごく親しい人に対してのみに使いましょう。
「お冠」はただ怒っているのとは違い、軽くて柔らかい印象がある言葉です。
常にポジティブな気持ちでいる為に、いざという時に使いこなせる様にしておきましょう。
目上の人や家族など親しい人向けの言葉ですので、赤の他人には使わない方が良いでしょう。