「貴賎」の意味・類語・対義語【使い方や例文】「差異」と相違の違い
労働者の世界では、古い言葉でブルーカラー、ホワイトカラーという言葉がありました。
事務職の意味のホワイトカラーより、身体を動かして働くブルーカラーの人々が下に見られる時代がありました。
職業で人を偏見の目で見たり、差別することは、とても愚かなことで、万が一、職業に優劣があったとしてそのことで差別することは絶対てはならないことです。
しかし、このような馬鹿げた見方が生まれたのは、「職業に貴賎なし」という言葉が出てきたからかもしれません。
このような見方をする中でも、「貴賤」という言葉が気になりました。
普段の日常会話、ビジネス会話の中でも、あまり聞くことのない言葉なのですが、一体どのような意味があるのでしょうか?
目次
- 「貴賎」の意味とは?
- 「貴賎」の類語
- 「貴賎」の言葉の使い方
- 「貴賎」を使った例文・短文(解釈
- 「貴賎」の英語
- 「貴賎」の言葉の由来
- 「貴賎」を使った言葉と意味を解釈
「貴賎」の意味とは?
「貴賎」には、大きく2つの意味があります。
1つは「身分の高い人と低い人」で、2つめは「尊いことや卑しいこと」という意味です。
「尊い」とは、「敬うべきこと」や「大切にすべきこと」という意味を持っており、「卑(いや)しい」とは、「品性が悪いこと」、あるいは「粗末であること」という意味を表しています。
このようなことから、「貴賎」とは、「身分の高い、低いという差」や「物事の品位の差」を意味している言葉になってきます。
- 「貴賎」の読み方
「貴賎」の読み方
「貴賤」とは、「きせん」という読み方になります。
「貴賎」の類語
では、「身分の高さ低さ」の意味を持つ「貴賤」と同じ、もしくは似ている意味の言葉には、どのようなものがあるでしょうか?
- 「優劣」
「優劣」
「優劣」という言葉が「貴賤」の類義語・同義語として挙げられます。
こと言葉には、読んで字のごとく「優れていること」と「劣っていること」を意味しています。
「優れていること」と「劣っていること」という言葉は、対極にある2つの差を表しているので高低差を表す「貴賎」の類義語とて分類することができます。
「あの2人の能力に優劣はほとんど見られない」という場合に使われます。
「序列」
「序列」とは、「一定の基準に基づいて並べた順序」という意味を持っています。
順序を付けて並べることによって、必然的に大なり小なりという差が生まれてくるので、「貴賎」に近い類義語として理解することができます。
「試験の結果によって、序列をつけられることは仕方のないことだ」という使い方ができます。
「貴賎」の言葉の使い方
「貴賤」を使う場面とは、何か2つの物事の比較になった時に出てくる言葉です。
物事や人を比較する場面は結構身近な場面でもあり得ることです。
「貴賎」を使った例文・短文(解釈
では、「貴賤」を使った言葉を見ていくことにしますが、これによって具体的なイメージが掴めると思います。
- 「貴賎」の例文1
- 「貴賎」の例文2
「貴賎」の例文1
「コンビニの店員であってもファミレスのウエイトレスであろうと、職業に貴賎はないんだから、もっとていねいな態度で接しなさい」
職業で相手の高い低いを判断にてしまう人がまだまだ少なくありませんが、決してこのような人にはなりたくないですね。
人間性を疑ってしまいます。
しかし、未だにこのような古めかしい価値観を持っている人達がいるのですから、驚きです。
「貴賎」の例文2
「職業に貴賎はないというが、人生には貴賎がある」
職業以外の単語を組み合わせることによって、「貴賎」という言葉の意味を活用することができるのが一文がこれです。
「人生には貴賎がある」という言葉には、「人生という人間の生き方によって、尊くも卑しくもなる」という意味が込められています。
どうせ一生を送るのですから、自分の人生を振り返った時に、後悔のない生きざまをしたいと思うことでしょう。
それだけに限られた時間を大切にしなくてはならないと思います。
「貴賎」の英語
「貴賎」を英語で表すと、“the high and low”となりますが、「貴賤を問わず」などの言葉では、形式ばった表現で、“without distinction of rank”という表現も使えます。
「貴賎」の言葉の由来
「貴賎」という言葉は、江戸時代以前からすでに存在していたと言われています。
始まりは、江戸時代に活躍した思想家の石田梅岩が「貴賎」を用いた表現で、「職業に貴賎なし」という言葉を当時の社会に対する警告として発していたのです。
梅岩は、士農工商という身分社会において、当時、身分の低かった商人を擁護するために「貴賎」という言葉を作り上げたと言われています。
まさか「貴賎」という言葉が、職業に身分の差が明確にされていた江戸時代までさかのぼることは、驚きかもしれません。
「貴賎」を使った言葉と意味を解釈
では、「貴賤」を使った言葉とその意味も見ていくことにしましょう。
- 「職業に貴賎なし」
- 「命に貴賎なし」
- 「貴賎上下」
- 「貴賎結婚」
「職業に貴賎なし」
「職業に貴賤なし」とは、「どのような仕事も社会に必要とされているものである」という解釈から、「働くこと、職務を全うすること、働いてお金を稼ぐこと」は、どんな立場の人であっても等しく貴いことなのだという「人を仕事の内容によって差別すべきではない」といったようなニュアンスが含められて、用いられることが多いのです。
「全ての職は内容や待遇にかかわらず、同等に貴い」
人の命を救う仕事や、金を貸す仕事もその貴さや重さは同じなのだということです。
「命に貴賎なし」
「命に貴賤なし」も職業と同じようにどのような立場の人であろうとも、命に重たい、軽いという差がないのです。
極端に言えば、罪を犯した人間も善良な人間も命の尊さに優劣はないということになります。
「貴賎上下」
「貴賎上下」とは、「身分の高い人と低い人を区別すること」を意味しています。
ここで言っている「上下」とは、身分や階級のことを指していますので、「貴賎上下の区別がない」とは、「身分や階級による高低差がないこと」を意味しています。
「この前のイベントでは、貴賎上下の区別なく、お互い楽しく盛り上がることができたのではないかと思います」
このような使い方ができます。
「貴賎結婚」
「貴賤結婚」という言葉もありますが、これは、配偶者同士の間で、所属している地域社会での立場、すなわち経済的な階層なや法的身分ということから見た時に、大きく上下の隔たりが存在するような婚姻の形態のことを指しています。
卑賤結婚や左手結婚と呼ばれることもあるのですが、特に彼らが属している社会においては、周りからは、対等だと認められないため、夫婦の両方、もしくは一方的に夫婦の間に出生する子供には、法的、社会的なペナルティが科せられることがありました。
今の時代では考えなれないことですが、地域によっては、この前近代的な考え方が残っていたりするかもしれません。
「貴賎」は、身分の高低差や品位差を意味として含んでいる言葉です。
そのために、よく使われる「職業に貴賎なし」という表現は、全ての職業に優劣の差はなく、立派で平等であるという概念を表していることは、説明した通りです。
今では、インターネットが普及して仕事かの価値観も大きく様変わりしてきました。
昔は大企業に就職して働くこと、昇進・昇格することが、社会的なステータスとなっていましたが、今ではそのようなことを言っている人は、笑い飛ばされてしまうのではないでしょうか?
個人でビジネスをしている人や若くして会社を興して活躍している人がたくさんいます。
そのようなことを考えると、「貴賤」という言葉は、次第に風化してくるのではないかと思えるほどです。
このようなことから、これからの時代に期待したいですね。