「手ずから」の意味・読み方・類語【使い方や例文】
日本語には、色々な種類の言葉がありますが、多くの人は言葉の種類を深く意識することなく利用されています。
でも、今、自分が使っている言葉が、どんな種類のものなのか、どのような由来のある言葉なのかを理解すると、その言葉に深い関心を持つようになってくるかもしれません。
それだけ日本語には、数々の種類があり、ことわざ、四字熟語、カタカナ語から、ネットスラングと、古いもの表現からネット時代を反映したような言葉まで存在しています。
その中で、「手ずから」という言葉があることをご存知でしょうか?
この言葉を意識することなく使っている人は、あまりいないかもしれませんし、意味さえしっかりと理解できている人もいないと思います。
ここで、「手ずから」の意味や用法を理解することで、日常生活やビジネスシーンでもコミュニケーションで活用してもらいたいと思います。
目次
- 「手ずから」の意味とは?
- 「手ずから」の類語や言い換え・似た言葉
- 「手ずから」の言葉の使い方
- 「手ずから」を使った例文
- 「手ずから」の英語
- 「手ずから」の語源や由来
- 「自ら」と「手ずから」の違い
「手ずから」の意味とは?
「手ずから」とは、一体どのような意味を持っているのでしょうか?
この言葉には「自ら(みずから)手を下して」や「自分で」というような意味がありますが、もう少し詳しく意味を説明すると、「他人には一切任せずに、自分自身の手で直接行動を起こすこと」という理解になるでしょう。
実際に「自分自ら直接、手を下して何らかの行動をする」という説明もでき、「手ずから文章をお書き下さる」といったような表現になりますが、ここで気づくことは、身分や地位の高い人について表現することで使われる言葉です。
- 「手ずから」の読み方
「手ずから」の読み方
「手ずから」の読み方は、「てずから」ということになるので、決して難しいことはありません。
「手ずから」の類語や言い換え・似た言葉
「他人には任せずに自分の手で直接行動すること」という意味がある「手ずから」を他の言葉で置き換えるとなると、どのような言葉になるでしょうか?「手ずから」は、「自分でやる」といったような言い換えができますが、他にも次のような類義語が挙げられると思います。
- 「先頭に立って行う」
- 「手を染める」
- 「手を下す」
「先頭に立って行う」
「先頭に立って行う」という表現は、身近な会話の中でも結構頻繁に使われる言葉で、「他の人に任せず自分からその集団を率いること」や「自らが先頭に立って、自らが音頭を取って行動をする」という理解ができます。
「自らが指揮して」や「自らがリードして」、「自らがイニシアチブを取って」などよいう言い方も、現代的な表現で、ビジネスの画面でよく耳にする言葉です。
「手を染める」
言葉の中で「悪いことをやめる」という意味を持つ」「足を洗う」がありますが、一方で「手を染める」という言葉もあり、「手ずから」の同義語として挙げることができるでしょう。
ただ、今までは「何かをし始めること」というニュアンスで使われていたのですが、この頃は、「悪いことを始める」といったように、マイナス的なイメージが付き待っているような感じもしています。
おそらく、この言葉を使う人もそのような想いを持って使っている可能性があります。
「手を下す」
「手を下す」という表現もあり、意味は「自分でそのことを行う」ということになります。
「着手する」、「手をつける」という言い方もできて、「まだ誰も手を下していないジャンル」、「社長自ら手を下す」などのケースで使われています。
「手ずから」の言葉の使い方
「手ずから」の言葉の使い方を考えてみると、自分が誰の力も借りずに、直接的に動くことになりますが、社会的に地位の高い人が自分で動く場合に限り使われることになります。
「手ずから」を使った例文
では、「手ずから」を使った例文を見ていくことにしましょう。
- 「手ずから」の例文1
- 「手ずから」の例文2
- 「手ずから」の例文3
「手ずから」の例文1
「この着物の刺繍されている1枚1枚の花びらは、母上が手ずから1針1針刺してくれたものです」
身近な人、近親者の人でも、自分より目上の人を指して、このような表現をすることができます。
この場合は「母上様」が丹精を込めて刺繍をしてくださったということになりますね。
「手ずから」の例文2
「将軍が手ずから学者を処罰となれば、天下を取った人達はどう思うでしょうか?」
いつの時代にも、このような悲劇が起こるものですが、歴代の名君と呼ばれた人々は、将軍のこのような行動を見て、とても憤慨するかがっかりするのではないかと思います。
「手ずから」の例文3
「彼が鉛の玉を手ずから投げるというアイデアで、それまでの考え方が一変したのです」
過去の歴史を紐解くと、今までの慣習を打破しようと、「手ずから」動くことで、それまでの慣習、価値観を大きく変える出来事があったのです。
ちょっとした行動が先々の歴史を大きく変化させていくきっかけが「手ずから」の行動だったのかもしれません。
「手ずから」の英語
「手ずから」を英語で例えるなら、“in person”、“personally”、“(do) oneself”という言葉で表現することができます。
「手ずから」の語源や由来
「手ずから」の語源を調べてみると、「手ずから」単独ではなく、「手ずから授ける」という言葉から見る必要があるかもしれません。
地位の高い偉い人から授かるものに「褒美」、「賞」がありますが、それを受け取ることを「授かる」と言います。
地位の低い人が偉い人からもらうことになるのですが、偉い人は地位の低い人の手の内を知っていても、下の人は上の地位の手の内は分らりません。
この「手」には「上手」を表す意味があり、高貴な方が地位の下の人に「授ける」方法として「手ずから」という言葉が生まれてきたようなのです。
「手ずから」が「高貴な方が自ら」、地位の低い人「授ける」という流れから発生したのではないかと思わるのです。
「自ら」と「手ずから」の違い
「手ずから」は「他の人の力を借りずに自分で行動すること」になりますが、「自ら」という言葉とは何が異なるでしょうか?
「他の力を借りず自分自身で行う」という意味は共通しているのですが、「手ずから」は、「自分自身が何か行動する」場合を指している一方で、「自ら」は、「行動だけではなく思考する」場合も言います。
そのようなことから、「過去の行いを手ずから反省した」という表現は適切ではなく、「過去の行いを自ら反省した」が正しい表現となります。
「褒美を自分自身で渡した」場合は、「褒美を手ずから渡した」、「褒美を自ら渡した」と、どちらとも正しい表現なのですが、「自ら」は、「自分自身で行動した」場合と「思考した」場合の両方で使うことができることに対して、「手ずから」は「自分自身が行動した」時にだけにしか誓えないことが大きな違いです。
微妙な相違ですが、このことは正確に覚えておく必要があります。
「手ずから」動くことは、現代社会の中で非常に大切なことです。
この言葉は、社会的に地位の高い人が自分で行動する時に使われることを説明しましたが、まさに現代のビジネス業界では、リーダーに求められる要件ではないかと思うのです。
この数年で、社会的な流れや価値観が大きく変化していますが、その変化がどのように動いていくのか、誰も正確に予想することが非常に難しいことです。
そのために、企業の中で社員の多くは、できるだけ平穏に過ごそうと自分から行動を起こすことをしなくなっています。
しかし、このままでは決して、自分も企業も成長・拡大することができません。
このような時だからこと、企業のトップが「手ずから」行動することで、閉塞している流れを打開できるのだと思います。
そうすることで、下の人達は勇気を持って行動することができます。