「生き字引」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
職場や日々の生活の中で、「生き字引」という言葉を耳にしたこと、ありませんか? 若い人が使う言葉というより、ある程度年齢がいった人が、その目上の人や同年代の人に、尊敬の気持ちを込めて使っていることがあります。
では、「生き字引」とは実際、どのようなことをいうのでしょう。
ここでは、「生き字引」という言葉を紹介します。
目次
- 「生き字引」の意味とは?
- 「生き字引」の類語や言い換え
- 「生き字引」の使い方
- 「生き字引」を使った例文と解釈
- 「生き字引」の語源
- 「生き字引」は誉め言葉?失礼?
- 「生き字引」の英語
「生き字引」の意味とは?
「生き字引」は、主に、その人に聞けば大抵のことはわかるというような、様々な分野について精通している人のことを言います。
または、一つの事柄を長年かけて極めていて、その分野の第一人者で、質問事項に全て答えられるような人のことも指します。
- 「生き字引」の読み方
「生き字引」の読み方
読み方は「いきじびき」です。
「じびき」という言葉自体、現代ではあまり使わなくなりましたが、「字引」は、「辞書」に置き換えられます。
「生き○○」という言葉は、他に、「生き神」や、「生き仏」、「生き証人」など、ありがたく、尊敬や敬意の対象となる人、たてまつられるような人のことを、言っている場合が多いようです。
「生き字引」の類語や言い換え
「生き字引」の類語は、博識、博学、大博士、博覧強記、碩学(せきがく)、もの知り、知識が豊富、歩く百科事典…などです。
また、少しニュアンスを変えて、一般的な言葉に言い換えるとすれば、知性派、賢者、知識人、ものごとの造詣が深い、学識が高い、博学偉才…などもあります。
「生き字引」の使い方
「生き字引」という言葉は、どのように使われているのでしょうか。
主に、大きく分けて二つの使われ方があるようです。
一つ目は、「長年経験を積んで、ある分野について精通している人」という意味と、二つ目は、「社会常識的なことや雑学的、トリビア的なことも含めて全般的に知識豊富な人」という意味です。
「生き字引」を使った例文と解釈
以下、「生き字引」の例文と解釈を、日常生活においての使用例を中心にみていきましょう。
使用する相手や時と場合によって、言葉自体に微妙なニュアンスが生じているのが分かります。
- 「生き字引」の例文1
- 「生き字引」の例文2
- 「生き字引」の例文3
「生き字引」の例文1
ある分野で長年経験を積み、精通している人の例
「経理の原さんは、長年あの部署で働いているから、部長の佐藤さんより、会社のお金の流れを把握している。また、細々とした経理部の雑務に対することも、原さんに聞けばほぼ解決する。いわば、原さんは、経理部の生き字引だ」
この場合、気を付けなければならないのが、当の本人たちがこの言葉を聞いてどう感じるかです。
言っている本人は気付いていないかもしれませんが、この場合の「生き字引」は、暗に、部長より平社員の原さんの方が、経理部の肝であるという事を言っています。
日々の仕事の中では、ごく普通にある事なのですが、実は、この例文、部長に対しても、原さんに対しても、少し失礼なニュアンスを含んでいるのです。
原さんについては、経理部に長年いて誰よりも経理に詳しいのに、出世もせず平社員のまま…と、指摘していることになりますし、経理部長においては、部下に仕事を任せっきりで、細部に関してはあまり知らないだろう…と、やや陰口のようにも受け取られかねない言い方です。
原さんをほめるつもりが、実際言われた方は、あまりいい気がしないかもしれません。
このような「生き字引」の使い方は、無意識にやってしまいそうですが、シーンや相手に応じて、言葉選びは慎重にしましょう。
「生き字引」の例文2
全般的に知識が豊富な人を指す場合
「お隣のおじいちゃんは、物知りで有名。町内のみんなに、生き字引って言われているよ」
こういう使い方はよくあると思います。
「おじいちゃん」=年長者、「物知り」=博学で、文脈には、目上の人に対する尊敬も感じられますし、「何か分からないことがあったら、お隣のおじいちゃんに聞けばいいな」という、安心感も見てとれます。
いわば「生き字引」の使われ方の王道と言えるのではないでしょうか。
「生き字引」の例文3
1と2の要素を含む場合
「大学生になり、新聞を取り始めた。知らない用語や読めない漢字だらけだけど、毎日読み続ける事で、いつか、周囲の人に『生き字引だね』と言われるようになりたい」
自分自身の抱負に「生き字引」という言葉を使用した例です。
少しユーモアを交えた「生き字引」という言葉が効いています。
「新聞を読む」というのは、スマホ・ネット世代の友人達には、なかなか言い出せないような、一見生真面目な要素のある行為です。
それを、少々古めかしい「生き字引」という言葉を使用し、クスリ、と笑いを誘うような文章になっています。
「生き字引」の語源
「生き字引」の語源は定かではありませんが、「字引」とは、「文字」を、「引く」=調べる・探し出す、この二文字が合体した言葉です。
国語・漢字・漢和辞典などを調べるという意味になります。
「字引」は「辞書」や「百科事典」を指すことが多いので、「生き字引」というと、「生き神様」と同じような使い方で、直訳すれば「生きている辞書のように物知りな人」となります。
「生き字引」は誉め言葉?失礼?
「生き字引」は他者に言う時に、やや注意が必要な言葉でもあります。
「字引」という言葉の持つ古めかしさから、老人をイメージする人が多く、女性はこの言葉を誉め言葉とは受け取らない傾向があります。
特に、若手社員が、年上の女性社員に使用するのは、タブーとも言えます。
誉めたつもりが、逆に「私が年寄りってこと?」などと、逆鱗に触れてしまう事もありますので、職場の女性には使わない方が無難です。
言い換えるとしたら、「○○さんは、物知りですね。スマホ並み、または以上の情報量。すごいな」
など、「字引」を「スマホ」に置き換えて、いくつかの褒め言葉と一緒に使うとよいでしょう。
- 「生き字引」は死語?
「生き字引」は死語?
実際、今の時代は大抵の事柄が、スマホで調べられて、簡単に情報を得られます。
職場でもデスクの上から辞書は消えつつあります。
学校でも学習にタブレット使用が導入される所が多くなり、辞書を推奨して引かせるところは少なくなった印象です。
新商品や新技術が次々に世に出て、ニュースや世の中の仕組みも目まぐるしく変わっていくので、全ての事に精通するのは、一昔前より、随分とハードルの高い事になってしまいました。
また、「過去のことを知っている」より、常に「新しいことを知っている」方が評価される世の中になりつつあります。
「生き字引」という言葉も、誉め言葉として使う機会も少なくなり、自然に誰も使わなくなっていったということでしょう。
「生き字引」の英語
主に“walking” (歩く)“dictionary”(辞書)、“walking”(歩く) “encyclopedia”(百科事典)となります。
「歩く百科事典」は、日本語でも耳にします。
いかがでしたか。
「生き字引」という言葉は、一見、誉め言葉のようにも感じられますが、使用する相手やシチュエーションなどに、配慮しなければいけない言葉だと知る事ができました。
女性はもとより、年配の方にいきなり直接「生き字引ですね」という使い方も、やや唐突で失礼にあたりますので、「生き字引」の当人がいない所で、第三者同士が、純粋な褒め言葉として使うのが無難でしょう。
何より、現代はスマホ・ネット時代。
死語となりつつある「生き字引」という言葉ですが、昔は純粋な誉め言葉だったという歴史も踏まえ、ユーモアを交えて、時々効果的に使用してみるのがお勧めです。