「虎視眈々」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
ナンパするために街なかで口説く女性を探しているときや、出世のために面倒な上司の飲み会につきあうとき、はたまた不倫疑惑のある夫のシッポを掴もうとしているときなど、きっとその人は、息を潜めて飛びかかるチャンスを待っています。
そんな状態にある人々を、どのようなことばで言い表すことができるでしょう。
ここでは、「虎視眈々」ということばをご紹介します。
目次
- 「虎視眈々」の意味とは?
- 「虎視眈々」の類語や言い換え・似たことば
- 「虎視眈々」の使い方
- 「虎視眈々」を使った例文
- 「虎視眈々」を分解して解釈
「虎視眈々」の意味とは?
「虎視眈々」は、志や野望を遂げるため、好機が訪れるのを形勢をうかがいながらじっと待っているようすを意味することばです。
出世という野望があったとしても、入社一年目でそれを口にしたところで、目をつけられたり、芽を摘まれたりする可能性があります。
そこをしっかりと加味して、日常の業務をこなし、先輩に可愛がられるよう努力し、後輩ができれば目をかけてやり、人望と実績を積むことで、チャンスが舞い込んだときにそれを逃さないだけの準備をしておく、外堀を埋めておく、というような意味あいだと考えるとわかりやすいでしょうか。
ある程度のストレスをかけることで、跳躍力を増す、というような考え方でもわかりやすいかもしれません。
- 「虎視眈々」の読み方
「虎視眈々」の読み方
「こしたんたん」と読みます。
「虎」は「トラ」という読みからもわかるように、動物のトラを意味する漢字として周知されていますが、獰猛なもの、勇猛なもの、おそるべきもの、という意味も持っています。
比喩的にそれらを「虎」と言い表すのですね。
「視」は視力検査などでご存知かと思います。
よく見ること、気をつけてみることや、見なすことを意味します。
「眈」は、ねらいをつけて見ること、にらむこと、などを意味します。
「虎視眈々」の類語や言い換え・似たことば
類語表現を見ておきましょう。
目標や野望のために好機が訪れるのを待つ、という意味に似たことばでは、どのようなものが浮かびますか。
普段遣いするようなことばから、あまり使われていないことばまで紹介します。
ぜひ参考にしてください。
- 「時を待つ」【ときをまつ】「時期をうかがう」【じきをうかがう】
- 「雌伏」【しふく】
- 「伏竜」【ふくりょう】
「時を待つ」【ときをまつ】「時期をうかがう」【じきをうかがう】
どちらも、「時」や「時期」ということばで、チャンスを表しています。
来るべき好機を逃さないためにも、「時を待」ったり「時期をうかがう」必要がありますね。
すぐに動くのではなく、狙いを定めて今はじっと動かずに形勢を整えている、という点が似ていることばと言えます。
「もう十分に準備はできているように見えるが、彼はまだ時を待っているのだという」。
「時期をうかがって彼女に声をかけてみようと思う」。
「雌伏」【しふく】
雌鶏が雄鶏に従っているようすからできたことばです。
将来的に野望や目標を遂げる日を待ちながら、ほかのものに従うことや、実力を養い、蓄えながら、活躍のチャンスが訪れるのをじっと待っているようすをいいます。
「今は雌伏してこの会社につとめているが、零細企業で終わる自分ではない」。
「伏竜」【ふくりょう】
昇天する時期を定めるまで水中に潜っている竜の意味から、転じて、まだ日の目を浴びていないが将来有望な人物や、世間一般には知られていない偉人のことをいいます。
「彼は学生の衣をまとっているが、近い将来には世界に飛び立つことになる伏竜だ」。
「虎視眈々」の使い方
多くの場合、「虎視眈々と狙う」のかたちで使われています。
また、「虎視眈々とうかがう」という使い方もされることがあります。
略奪愛など、人のものを奪いたがる人や、人の上に立ちたいという願望のある人、打算的な人などが、なにか目的のために時期を待っているときに使われます。
「虎視眈々」を使った例文
具体的にどのように使われているのか、例文を挙げて見ていきましょう。
自分ならば、なにに対して「虎視眈々」となることができるか、自分の身近な人に、「虎視眈々」としている人はいないか考えてみましょう。
親近感がわいてくると、ことばがより身近に感じられ、覚えたり理解しやすくなります。
- 「虎視眈々」の例文1
- 「虎視眈々」の例文2
- 「虎視眈々」の例文3
「虎視眈々」の例文1
「男は手に入ったとたんに興味を失うことがある。彼女の彼氏をそういうタイプなのだろう。彼女は俺にいつも彼氏の愚痴をいうが、それを甲斐甲斐しく聞いてやっている俺が虎視眈々と自分を狙っていることに気づいているのだろうか」
男女の関係は不思議なものですが、略奪愛や浮気、不倫というのはいつの世も話題に事欠きません。
相手のいる人を奪う、というのは、「虎視眈々タイプ」ともいえる人々には興奮の材料なのでしょう。
直球ストレートで告白などせず、相手に甘いことばをいい、よく話を聞いてやるなどして自分に気持ちを傾けさせるところが、「虎視眈々」をよく表しています。
「虎視眈々」の例文2
「同僚には悪いが、彼をおだてることで尻に火をつけさせ、自滅するのを待つことにしている。虎視眈々と狙いを定めれば、部長の椅子はおのずからやってくるだろう」
こちらも、直接相手を刺激したり、貶めたりすることなく、自然に自分を有利に持っていくための計算を表しています。
「虎視眈々タイプ」の計算の精度が高ければ高いほど、狙われた相手が勝ち残ることはむずかしいでしょう。
実際、このようなことは日常にありふれていますね。
「虎視眈々」の例文3
「食べこぼしたらすぐさま取ってやるのだ、とうちの飼い猫はテーブルの下に潜りこみ、虎視眈々とうかがっている」
人間の「虎視眈々」にはどうしても腹の黒さがにじみますが、これが飼い猫になったとたん、かわいげが出てきますね。
罪のない野望もあるものです。
ぽろりと飼い主がこぼしたものをすぐさま口にする猫のすがたが目に浮かぶようです。
「虎視眈々」を分解して解釈
一文字ずつの意味はすでに紹介しましたが、「虎視眈々」の四字熟語は、「虎視」と「眈々」の二つの熟語から形成されている、ともいえます。
このように、いろんな角度からことばを眺めることで、新たな発見や気づきがあり、理解が深まります。
- 「虎視」
- 「眈々」
「虎視」
「虎視」とは、虎が獲物を狙っているときの鋭い目のことをいいます。
この獲物が、成果物や目標、野望などの比喩になっているのですね。
実際に虎の目を見ることはなかなかないでしょうが、テレビなどからイメージすることはできますね。
獲物が気づくことがないよう、気配を消し、それでいて自分が絶対に仕留められる自信のある距離まで近づいたら、瞬間、殺意をあらわにし、すばやく飛びかかります。
「眈々」
「眈々」には、目をすえてみる、じっと見る、という意味があると上述しました。
混同されているケースがすくなくないのですが、文字の意味からも、「耽々」と書くのは誤りです。
「耽」という字は「耽溺」などに使われており、度を越えて楽しむ、という意味があります。
「虎視眈々」から考えても、意味あいがマッチしていないことがわかりますね。
じっと狙い定める、というところからも、「目」に関係する字が正しいことを覚えておきましょう。
「耳」ではありません。
「虎視眈々」とは、獲物や目的、野望などを達成、獲得するため、形勢をととのえながら好機がめぐってくるまでじっと待っていることをいうことばでした。
人間生きていれば、なんの望みもないよりは、野望を持って生きていきたいものですが、できれば「虎視眈々」と狙い、だれかを貶めることで手に入れるのではなく、愚直に自分の道を見つめ、その結果としてだれからも望まれるかたちで、成功を手にしたいものですね。