「趨勢」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
「趨勢」という言葉をご存知ですか?「趨」という漢字は、あまり見かけない漢字ですよね。
日常会話ではあまり聞いたことはない「趨勢」という表現の意味や類語をご紹介します。
目次
- 「趨勢」の意味とは?
- 「趨勢」の類語や言い換え・似た言葉
- 「趨勢」の言葉の使い方
- 「趨勢」を使った例文
- 「趨勢」を使ったその他の言葉
- 「趨勢」の対義語は何だろう?
- 「趨勢」を英語でいってみよう
「趨勢」の意味とは?
「物事のこれからの成り行き」、「社会の動向のこと」を「趨勢」といいます。
最初の一文字である「趨」は、日本漢字能力検定の準一級レベルの漢字で、意味は「足ばやに行く」「目的に向かって行く」という意味があります。
「勢」は、「勢(いきお)い」「ようす」などの意味があります。
- 「趨勢」の読み方
- 「趨勢」について考えてみよう
「趨勢」の読み方
「すうせい」と読みます。
「趨(すう)」という漢字は、反芻(はんすう)の「芻(すう)」に「走(そう・はしる)」を組み合わせたもので、別の読みは「しゅ・そう」があります。
「趨勢」について考えてみよう
「物事のこれからの成り行き」、「社会の動向のことをあらわす「趨勢」。
「趨勢」には、必ず「時」が関係しています。
時代によって人の傾向や感じ方は少しずつ変化していきますが、個人レベルで考えれば、今も昔も人間の考え方に違いはあまりありません。
いつの時代でも人間の感性に違いはない
今から1000年以上前に書かれた、清少納言の『枕草子』を読んだ経験ある方も多いかと思います。
「春はあけぼの……」からはじまるこの随筆には、四季の情景とその美しさについてたおやかに書かれています。
その季節毎の美しさの表現を読むと、今も昔も人の感性に違いがないことがわかります。
どんな時代であろうが美しい、悲しい、うれしい、などのように感じ方に変化はないのです。
「趨勢」は社会の風潮
今も昔も人間としての感じ方の変化はありませんが、やはりその時代のトレンドは変わっていきます。
「非常識だ」とされていたものが、今では「常識」となるのは、よくあることです。
戦時中では、「好戦的である」ことが常識でした。
しかし、現在は「平和である」ことが大切とされています。
「趨勢」は社会の風潮であり、時局によっては個人レベルで変化させるのは難しいのかもしれません。
「趨勢」の類語や言い換え・似た言葉
「趨勢」の類語や似た言葉にはどのような言葉があるでしょうか?
キーワードは「時代の流れ」です。
どの言葉も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
- 「動向」【どうこう】
- 「時流」【じりゅう】
- 「情勢」【じょうせい】
- 「形勢」【けいせい】
- 「トレンド」
- 「風潮」【ふうちょう】
「動向」【どうこう】
個人、集団の心理や行動の動きや傾向。
刑事ドラマなどで、「犯人の動向を探る」というセリフを聞いたことはありませんか?「動向」とは、個人的な場合は、対象人物の行動や心理をいいます。
このように、特定の個人に対して使用する場合と、社会全体あるいは、消費者などの特定の集団の行動や心理に大しても使用します。
「時流」【じりゅう】
その時代の風潮・傾向。
「時流」とは、「時」という字のとおり、時間が関係している言葉です。
よく「時の流れに逆らえない」等といいますよね。
時間は一方方向に流れて行き、引き返すことはありません。
そして、今までは主流でなかったものが、その時代の傾向によって主流に変化していくことがよくあります。
時代の流れに逆らうことは難しいものです。
「情勢」【じょうせい】
物事の事情やなりゆき。
形勢。
「情勢が悪くなった」「国際情勢」など「情勢」という言葉をよく耳にしたり目にする機会はありますよね。
「情勢」の「情」とは、「ありさま」「ようす」という意味があります。
「形勢」【けいせい】
変化する物事を全体的に見た、その時その時の状態、また勢力の関係。
なりゆき。
雲行き。
「形勢が逆転した」「形勢が傾く」などのように、スポーツの試合で使用することの多い言葉です。
マラソンなどで終盤になって先頭からランナーが外れてゆき、後方から新しいランナーが先に出た時など、状況が変化したときによく使用します。
「トレンド」
「トレンド」とは、流行、傾向という意味があります。
ファッション等の流行や経済変動の動向を表す言葉です。
現在では、インターネットのSNSなどで話題になっていることを指すこともあります。
「風潮」【ふうちょう】
世間の移り変わりにつれて動いて行く、時代の傾向。
「風潮」も、時代の流れや情勢、トレンドや流行を意味する言葉です。
自然に起こる「風」「潮」の流れは引き起こそうとして起こすわけではありません。
このように、時代とともに世間一般の傾向は変化していくのも自然なことなのです。
「趨勢」の言葉の使い方
「趨勢」はどのように使う言葉でしょうか?なかなか、日常で使うことはありませんが、時事ニュースや経済書、小説などでは「趨勢」という言葉が使われています。
明治期の文学者夏目漱石の談話『文壇の趨勢』の中で、個人主義はすなわち平等という考え方であり、作家たるもの自分の個性を貫いて作品に残さなければならないのは「天下の趨勢」だと述べています。
「趨勢」を使った例文
- 「趨勢」の例文1
- 「趨勢」の例文2
- 「趨勢」の例文3
- 「趨勢」の例文4
「趨勢」の例文1
「子供にスマートフォンを与えるのは心配だが、これも時代の趨勢だから、どうしようもない」
「趨勢」の例文2
「社会的な趨勢に後押しされ、我が社でも男性が育児休暇をとれることになった」
「趨勢」の例文3
「これからの世界の趨勢は、どの国とも相互的に依存する関係になるという方向へいくだろう」
「趨勢」の例文4
「今のファッションの趨勢は、チェック柄にエコファーだというから、新しい服を買ってこなきゃ!」
「趨勢」を使ったその他の言葉
「時代」「変化」は「趨勢」と一緒に組み合わされてよく使われる言葉です。
- 「時代の趨勢」【じだいのすうせい】
- 「趨勢の変化」【すうせいのへんか】
- 「趨勢変動」【すうせいへんどう】
「時代の趨勢」【じだいのすうせい】
時間的スケールで見た物事の動きのこと。
「成り行き」「流れ」「傾向」
「趨勢の変化」【すうせいのへんか】
時間が流れるのに伴って起こる変化のこと。
「時代の波」「時の移り変わり」「トレンドの変化」
「趨勢変動」【すうせいへんどう】
経済変動のうちで長期間にわたって示される、傾向的な動きのことを「趨勢変動」といいます。
経済変動のなかに含まれる趨勢変動を見出すことは、長期的な見通しや計画を立てるにあたって最も重要なこととされています。
「趨勢変動(すうせいへんどう)」は、トレンドともいいます。
「趨勢」の対義語は何だろう?
「ある方向へと動く勢い」「社会などの全体の流れ」を意味する「趨勢」の対義語にあたる言葉は特にありませんが、その意味と反対の意味を持つ言葉を集めてみました。
- 「超然」【ちょうぜん】
- 「独立独歩」【どくりつどっぽ】
「超然」【ちょうぜん】
物事にこだわらず、平然としているさま、世俗に関与しないさまを「超然」といいます。
「時代の風潮に超然としている」というと、時代の風潮に流されずにいることです。
「独立独歩」【どくりつどっぽ】
他人にたよらず、自分の信じるところに従って行動することを「独立独歩」といいます。
「趨勢」を英語でいってみよう
「時代の流れ」「トレンド」という意味を持つ「趨勢」を英語では、どのように表現するのでしょうか。
時事英語としても頻出する「趨勢」の意味を持つ英単語をご紹介します。
- “trend”
- “tendency”
- “go with(against) the current”
“trend”
“The event changed the trend of public opinion.”
(その出来事が世論の趨勢を変えた。)
“tendency”
“The tendency is toward higher prices.”
(物価は値上がりする趨勢にある。)
“go with(against) the current”
“It is hard to swim against the current.”
(時代の趨勢に逆らうのは難しい。)
トレンド、社会の流れを意味する「趨勢」についてご紹介しました。
時代の「趨勢」に逆らうことは難しいでしょう。
しかし時代をとらえ、「趨勢」をしっかりキャッチすれば、怖いものはありません。
いつの時代であっても冷静な判断をもって「趨勢」を捉えていきたいものですね。