「諸行無常」の意味や語源、「諸行無常」【使い方や例文】
仏教用語のひとつ「諸行無常」の意味と読み方、語源を紹介します。
さらに「諸行無常」の使い方や例文を紹介して行きます。
目次
- 「諸行無常」の意味とは?
- 「諸行無常」の語源
- 「平家物語」について
- 「諸行無常」の類語
- 「諸行無常」の使い方
- 「諸行無常」を使った例文
「諸行無常」の意味とは?
「諸行無常」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
受験勉強で日本史や国語を受験科目に選んでいた人は、「諸行無常」という言葉にぴんときたかもしれません。
とはいえ、「諸行無常」とは何かと改めて意味を聞かれると「良く分からない」という方もいらっしゃるでしょう。
聞きたくても聞けない、そんなメジャーで意味が分かりにくい言葉が「諸行無常」です。
- 「諸行無常」の読み方
- 「諸行無常」の意味
「諸行無常」の読み方
「諸行無常」は「しょぎょうむじょう」と読みます。
「諸行無常」は仏教用語ですので、画数が多い漢字が使われている印象があります。
「諸行」は「諸行」と読み、「無常」は「むじょう」と読みます。
この機会に読み方と書き方を覚えておきましょう。
「諸行無常」の意味
「諸行無常」の「諸行」は「この世の全て」という意味があり、「無常」は「常には続かない」という意味があります。
続けると「この世のすべての物は、常に同じ状態ではいられない」という意味になります。
また「この世の一切の物は変化を続ける」という意味もあります。
どんなに立派な家があったとしても、100年後には朽ち果てているかもしれません。
またそこで暮らしている人も、100年後には入れ替わっているはずです。
「諸行無常」は、このようなある意味当たり前の事を語ってくれています。
忘れがちですが、「ずっと同じではいられない」という大切な事を、「諸行無常」という言葉は教えてくれます。
「諸行無常」の語源
「諸行無常」の語源を紹介します。
「諸行無常」は仏教用語で、「三法印」という、小乗仏教における仏教の根本的な理念を表現したもののひとつです。
三法印のひとつが「諸行無常」で、他に「諸法無我(しょほうむが)」と「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」があります。
「諸法無我」には、あらゆるものには実体がないという意味が、「涅槃寂静」には、煩悩がなくなった悟りの世界は静かで安らぎに満ちているという意味があります。
「平家物語」について
「諸行無常」を知るきっかけになるのは「平家物語」ではないでしょうか。
そこで「平家物語」の基本情報を紹介します。
- 「平家物語」とは
- 「諸行無常の鐘の声」
「平家物語」とは
「平家物語」は鎌倉時代に書かれた物語だとされています。
作者は不明ですが、信濃前司行長という説もあります。
平安時代の後期に全盛期を迎えた「平氏」の興亡を描いた物語です。
平氏は「源平」と呼ばれた皇族系の武士団、「源氏」と「平氏」の「平氏」です。
武士色が強かった平氏は、徐々に貴族化して行き、「平清盛(たいらのきよもり)」の頃に絶頂期を迎えます。
「平家物語」は平氏が勃興する時期から、滅亡するまでを描いており、仏教色や儒教色が強い文学とされています。
「諸行無常の鐘の声」
「平家物語」の冒頭の言葉の中に「諸行無常」が登場します。
それでは「祇園精舎の鐘の声」…で始める有名な物語の冒頭の言葉をチェックしてみましょう。
「祇園精舎の鐘の声、「諸行無常」の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」となります。
最後の「盛者必衰」は、頂点を極めた者も、かならず衰退の途をたどるという意味です。
「諸行無常」の、「この世の何であっても、変化をせずにいられない」という意味と対応した言葉ではないでしょうか。
「諸行無常」は、「平家物語」の全編に流れる考えです。
「諸行無常」の意味をより知りたいと思った人は、「平家物語」を読んでみましょう。
「諸行無常」の類語
続いて「諸行無常」の類語を見て行きましょう。
「この世のすべてのものは移り変わる」という意味の言葉を、いくつか紹介します。
- 「盛者必衰の理」【じょうしゃひっすいのり】
- 「驕る平家は久しからず」【おごるへいけはひさしからず】
「盛者必衰の理」【じょうしゃひっすいのり】
先ほど紹介した、「平家物語」の冒頭部分に「盛者必衰の理」という言葉が登場しました。
「どんなに繁栄した一族でも、必ず衰退していく」という意味があります。
「理」は「ルール」という言い換える事ができます。
歴史に詳しい人は、「盛者必衰の理」について、いくつもの例を挙げる事ができると思います。
身近な所では、芸能界の人気者が絶頂を迎えて消えて行く姿が、「盛者必衰の理」に近いかもしれません。
もちろん、その事が悪いというわけではなく、「そういうものだ」と教えてくれる言葉です。
「驕る平家は久しからず」【おごるへいけはひさしからず】
こちらも「平家物語」に登場した言葉です。
「驕る平家」とは、絶頂を迎えて調子に乗る平氏の事で、調子の乗ってはしゃぐような者は、必ず没落するという意味があります。
人生にはいい時期と悪い時期があります。
いい時期に調子に乗ってはしゃぎすぎると、落ち目になるのが早くなってしまうという教えが含まれています。
「諸行無常」の使い方
「諸行無常」という言葉を仏教的に受け入れると、「世の中は変化するのが当たり前で、その事を悲しむ必要はない」という意味になります。
そのため、誰かが大切な人を亡くして悲しい思いをしている時に「諸行無常」という言葉を使って「この世に生まれた人はすべて死んでいく。
仕方のない事だ」と励ましてあげる事ができるかもしれません。
また、商売に失敗して落ち込んでいる人にも「諸行無常」という言葉を使って、気にする事はないと言ってあげる事もできるでしょう。
また「すべての物は変化せずにいられない」という点を面白く受け取って、言葉にする事もできます。
例えば若い頃と比べて、体型や趣味が大幅に変わった人を見た時に、「諸行無常」とつぶやくのも良さそうです。
「諸行無常」を使った例文
最後に「諸行無常」という言葉を使った例文をチェックしてみましょう。
「すべての物は変化する」という点、さらには「無常観」を押さえておくと、様々な場面で使う事ができるでしょう。
- 例文1
- 例文2
例文1
ビジネスシーンで「諸行無常」を使った文章を作ってみましょう。
「あれだけ権力を誇っていた専務が追いやられるなんて「諸行無常」だ」、「業界最大手だったはずのあの一流企業が倒産するなんて「諸行無常」としかいいようがない」、「やり手だった○○さんが、女性で失敗して失脚するとは「諸行無常」だな…」など、様々なシーンで使う事ができます。
企業の盛衰は、まさに「平家物語」のようですから、「諸行無常」という言葉がとてもしっくりきます。
例文2
日常的なシーンでも「諸行無常」という言葉を使う事ができます。
「若いころはモデル体型で、あんなに可愛かったAさんの体重が100kg超えるなんて、「諸行無常」だな」、「10年付き合った彼女と別れてしまった。
「諸行無常」を実感したよ」、「電車の中で雑誌や新聞を読む人がいなくなって、スマホを見ている人ばかりになったのを見ると、「諸行無常」という言葉が思い浮かぶ」などです。
世の中の移り変わりは、思っている以上に速いので、「諸行無常」を実感する事ができます。
携帯電話の進化を考えただけでも「諸行無常」だなと思えるでしょう。
もちろん個人の体型も、常に同じままではいられないのは本当です。
中年以降の人は、鏡に映った自分の姿を見る度に「諸行無常」を感じるかもしれません。
「諸行無常」の意味や語源、「平家物語」についても見てきました。
「諸行無常」という言葉がとても優れた言葉で、現代の全てのものに当てはまる事を実感できたのではないでしょうか。
ぜひこれを機会に「諸行無常」という言葉を使うようにしてみましょう。