「幸甚」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
人からなにかをしてもらったとき、ありがとう、と感謝を伝えるのは一般に広く知られています。
子どもから老人まで、多くの人が使うことばですが、ビジネスシーンにおいては、幼く取られてしまう場面もあるのではないでしょうか。
そんなときに活躍する「幸甚」ということばについて、ここではご説明します。
目次
- 「幸甚」の意味とは?
- 「幸甚」の類語や言い換え
- ほかの類語
- 「幸甚」の使い方
- 「幸甚」を使った例文
- 「幸甚」を使ったことば
「幸甚」の意味とは?
漢字を見ただけでもおわかりになる方も多いでしょうが、「幸甚」とは、この上もなく幸せなこと、最上級の喜び、何よりの幸福と感謝、などという意味のことばです。
幸いなること甚だし、の漢語から来ているとされます。
砕けた言い方ですと、めちゃくちゃありがたい、や超嬉しい、という意味ですね。
マジありがとう、なんて言えない相手にその気持ちを伝えるときにはことばを選びます。
せっかく感謝を伝えるのですから、相手にきちんと伝わるように、TPOに応じてことばも使い分けられるといいですよね。
- 「幸甚」の読み方
「幸甚」の読み方
「こうじん」と読みます。
「幸」はほかに、「さち」「さいわ(い)」「しあわ(せ)」、また常用漢字表外ですが、「御幸(みゆき)」という読みがあります。
「幸せ」はよく使われることばではありますが、そもそもは手かせを意味する象形文字だったといいます。
手かせというのは刑罰の一種です。
この手かせを免れた、という説や、手かせ程度の刑罰で済んだ、という説がありますがどちらも、運がよかった、というところから、転じて幸せという意味になったそうです。
「甚」はほかに、「はなは(だ)(しい)」という読みがあります。
度を越えている、という意味です。
水のたくさん入った容器がかまどに置かれ、下から火が焚かれているという象形文字から、度が過ぎている、という意味の「耽」と同じ意味を持つようになり、甚だしい、という意味になったとされます。
非常に楽しい、という意味も持ち合わせた漢字です。
「幸甚」の類語や言い換え
以前は手紙などでよく使われていたそうですが、現在ではビジネスメールなど、ビジネスでとくに使われることの多い「幸甚」です。
さて、ほかにどのような言い方ができるのでしょう。
日本語のむずかしいところは、同じことばばかり使っていると、そのことばに込める意味あいが薄れてしまいがちなところです。
あいつはなにかと「幸甚の至り」というが、本当にそう思っているのか?なんて疑心を持たれないためにも、さまざまな言い換えの表現を知っておきましょう。
- 「幸い」【さいわい】
- 「僥倖」【ぎょうこう】
「幸い」【さいわい】
「〇〇してもらえると嬉しい、ありがたい」というときに使います。
「助かります」ということばもありますが、目上の方に対して言う場合には、すくなくとも「幸いです」を身につけておきましょう。
「目を通していただけますと幸いです」のように、「〇〇していただけますと幸い」というかたちで使うとよいでしょう。
さらに丁寧な言い方を心がけたい場面では、「目を通していただけますと、幸いに存じます」となります。
「幸甚」は、「幸い」よりもさらに強く気持ちを伝えたい場合に置いておき、通常は「幸い」を使うなど、分けておくとよいでしょう。
「僥倖」【ぎょうこう】
漫画や小説のなかで見知った方もいらっしゃるかと思います。
こちらは、思いがけない幸運を意味しています。
運良く、という場合に使われます。
ビジネスシーンではなかなか使う場面が限られますが、パーティーなどの場で、ある種の無礼講のなかで、感謝の気持ちを伝えるのには悪くありません。
「入社二年のわたくしがプロジェクトチームに参入できたのは、僥倖としかいいようがありません」
ほとんどありえない幸運、という意味ですので、すこしオーバーに聞こえますが、喜びを伝えるのに向いた場面もあることと思います。
ほかの類語
ほかにも、「ありがたく存じます」「光栄でございます」「光栄に存じます」などの表現は、ビジネスシーンでも違和感なく使うことのできる類語といえるでしょう。
どれも、自分の感じている喜びを表現するときに使われることばになります。
さまざまなことばを知っていることで評価されるということもありえますので、いろいろなバリエーションを知った上で、自分にとって心地よい表現を見つけていってください。
「幸甚」の使い方
「幸甚」は、目上の人に向けて使うことのできる丁寧なことばです。
「〇〇していただけますと幸甚です」というかたちで、願いや要望、依頼を伝えるときに使います。
「〇〇してくださり幸甚です」は、要望通りにことが運ばれたときなどにお礼を伝える際の使い方になります。
ここまでは、相手との物事の授受が行われた場合の使い方です。
また、贈り物などする際に、「喜んでいただけますと幸甚です」などのようにも使われます。
「幸甚」を使った例文
使い方の型を見るだけでは具体的なイメージがわかない、という方もいらっしゃると思いますので、例文を挙げていきます。
三つの使い方、それぞれの例文を示しますので、どの意味で使われているか、また自分ならばどんなシーンで使えそうか、考えながら見てみてください。
- 「幸甚」の例文1
- 「幸甚」の例文2
- 「幸甚」の例文3
「幸甚」の例文1
「ささやかですが、記念品をお贈り致しました。お気に召していただけますと幸甚です」
贈り物に対しての「幸甚」ですね。
ほかに、「ご笑納いただけますと幸甚です」「お喜びいただけますと幸甚です」などの使い方も、失礼には当たりません。
ビジネスシーンのほかにも目上の方に贈り物をする、という場面で重宝する表現ですのでぜひ覚えてください。
「幸甚」の例文2
「新たに追加資料を作成しましたので、お目通しいただけますと幸甚です」
要望、依頼の「幸甚」になります。
締切をいつにしてほしい。
会合に出席してほしい。
返事が早くほしい。
といった要望に対して広く使うことのできる言い回しになります。
すこし無理を言うときなども、きちんとしたことば遣いだと失礼に当たらないこともあります。
あくまで自分の意見や要望になりますので、返事次第では通らないこともありえますが、丁寧な日本語というのは、相手の気持ちを動かすことがあるのも事実です。
「幸甚」の例文3
「お足もとの悪いなか、お越しいただきまして、誠にありがとうございます。粗酒粗餐ではございますが、お楽しみいただけますと幸甚です」
感謝を表す「幸甚」になります。
お招きいただき幸甚です。
ご教授いただき幸甚です。
などと使うことができます。
ありがとう、で済む場合もありますが、より丁寧に、自分の気持ちを伝えたい場合には、「幸甚です」と言ってみてはいかがでしょうか。
「幸甚」を使ったことば
「幸甚です」という語尾だけが浮いてみえるシーンもあるでしょう。
実際、上記の例文でもそのように見えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「幸甚」を使ったほかの言い回しを紹介していきますので、こちらもぜひ活用してください。
- 「幸甚に存じます」
- 「幸甚の至り」
「幸甚に存じます」
「お恥ずかしい限りではございますが、ご教授いただけますと幸甚に存じます」
「心ばかりの品でございます。
ご笑納いただけますと幸甚に存じます」
このように、語尾を丁寧にすることでさらに相手への気持ちが伝わるでしょう。
「幸甚の至り」
「幸い」<「幸甚」であるなら、「幸甚」<「幸甚の至り」と思っていただくとわかりやすいでしょう。
「至り」とは、物事がもっとも高い状態に達していることを表します。
ここでは、幸せが最上級であることを意味しますので、より幸せの度合いが大きい場合に使うといいでしょう。
「ご教授いただけますと幸甚に存じます」よりも、「ご教授いただけますと幸甚の至りでございます」のほうが、より幸せが大きい、ということになります。
「幸甚」とは、この上もなく幸せなこと、という意味でした。
通りいっぺんの幸せに対しては、本来は使われないことばでしょうが、ビジネスシーンでは人との相関図がたいへん重要となります。
うまく日本語を操り、相手との気持ちのキャッチボールを行うことで、「幸いなること甚だしい」仕事ができることもあるでしょう。
いい仕事をしたいとき、思いだす一言になれば「幸甚」です。