「僥倖」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
こんなことが自分の身に起こっていいものだろうか、と尻込みするような幸運が舞い降りることも、たまにはあります。
当せん確率の低いライブのチケットに当たったり、強豪チームとの試合に勝ったりしたとき、それをどんなふうに伝えることができるでしょう。
ここでは、「僥倖」ということばについてご紹介します。
目次
- 「僥倖」の意味とは?
- 「僥倖」の類語や言い換え・似たことば
- 「僥倖」の使い方
- 「僥倖」を使った例文
- 「僥倖」の語源
- 「僥倖」の対義語
- 芸術作品における「僥倖」
「僥倖」の意味とは?
「僥倖」とは、思いがけない幸福や、偶然に得た幸せのことを意味しています。
「僥」には、願うこと、求むこと、という意味があります。
また、「倖」は人偏に幸いと書きますが、幸い、とくに思いがけない幸いという意味があります。
思いがけない幸いや、思いがけない幸いを望むときに、「僥倖」ということばが使われます。
語源に関しては後述しますので、そちらをあわせて御覧ください。
- 「僥倖」の読み方
「僥倖」の読み方
「ぎょうこう」と読みます。
「僥」はほかに、「もと-める」「ねが-う」という読みがあります。
「倖」はほかに、「さいわ-い」「へつら-う」という読みがあります。
どちらも「僥倖」など熟語のかたちでは使われることばですが、「僥(もと)める」や「倖(へつら)う」という使い方ではなかなか見ることがありません。
「僥倖」の類語や言い換え・似たことば
「僥倖」とよく似たことばというと、どんなものが浮かぶでしょう。
「僥倖」ということばが使いづらい場面と、「僥倖」がぴったりとあう場面とで、ことばを使い分けられるようになると良いでしょう。
ここではいくつかの類語や似た表現を挙げておきますので、ぜひこの機会に覚えてください。
- 「幸運」【こううん】「ラッキー」【らっきー】
- 「棚からぼた餅」【たなからぼたもち】
「幸運」【こううん】「ラッキー」【らっきー】
思いがけずよいことが起きたり、いいめぐりあわせになることを、「幸運」または「ラッキー」などといいますね。
ほかに「運がいい」などというのもよく似た表現になるでしょう。
「寝坊したときは遅刻必至だと思ったが、電車が五分遅れており、なんとか乗車できたのは幸運といえるだろう」
「僥倖」と言い換えることもできそうですが、すこし仰々しさもありますので、ここでは幸運としたほうがしっくりきますね。
よほど重要な会議などに間に合ったのであれば、「僥倖」といっても過言ではないでしょう。
「棚からぼた餅」【たなからぼたもち】
「たなぼた」と略した言い方でも周知されています。
苦労することなくよいものにめぐりあったり、思いがけず幸運に恵まれることをいいます。
「諦め半分で見ていたノートのページが今回のテストの中心だとは思わず、たなぼた的に点数を稼ぐことができた」
こちらは、然るべき努力を怠っていたにもかかわらず、というニュアンスを含みますので、ビジネスシーンでは「僥倖」と使い分けたほうがよさそうです。
「僥倖」の使い方
藤井四段が20連勝めのインタビューでも口にしたというのは広く知られる「僥倖」ということばですが、どのような場面で使うといいでしょう。
「たなぼた」などの軽い印象のない「僥倖」は、ビジネスシーンでも悪目立ちすることがありません。
「僥倖だ」と名詞的に使うこともできますし、「僥倖する」と動詞的に使うこともできます。
思っているよりも汎用性の高いことばなのではないでしょうか。
「僥倖」を使った例文
では、具体的に例文を挙げて、「僥倖」の使い方を見ていきます。
どんなシーンでならば「僥倖」にあうのか、文脈からとらえてみましょう。
はじめは慣れないかもしれませんが、いくつも例文を見ていくうちに、「僥倖」が腑に落ちていくでしょう。
- 「僥倖」の例文1
- 「僥倖」の例文2
- 「僥倖」の例文3
「僥倖」の例文1
「弱小と笑われた我が野球部が、かのT高野球部に勝てるとは、僥倖としかいいようがない」
ここでは「僥倖」が名詞的に使われています。
勝てるはずがない相手との戦いに勝つというのは、努力もさることながら、思いがけない幸福、とでも思わなければ、受け入れることができないこともあります。
このように、なにか人智を越えたものの恩恵を受けて、という気持ちになるほどの幸運を「僥倖」のことばで表しています。
「僥倖」の例文2
「不意に倒れた父を前に、家族はベッドを囲んで僥倖するばかりだ」
「僥倖する」は、思いがけない幸福を願い待つ、という意味で使われます。
半ば諦めているような事象でも、最後まで望みだけは断ちたくない、という場合に「僥倖する」を使うといいでしょう。
「自己採点は芳しくなかったが、発表の日まで僥倖するくらいしか今はできない」
こちらも、「僥倖する」がぴったりとあてはまる例文です。
「僥倖」の例文3
「入社間もない自分のアイデアがそのまま採用されるとは僥倖である」
これが「たなぼた」では、示しがつきません。
「僥倖」は、目上の人に対して使っても失礼には当たりませんので、「僥倖です」と伝えれば、驚きと喜びを同時に伝えることができるでしょう。
また、重みのある日本語を使うことで、責任のある仕事を任せられるという信頼感も与えることができます。
「僥倖」の語源
「僥」は人偏に「堯」と書きます。
「堯」も「ギョウ」と読み、高い、気高い、という意味があります。
「倖」の字は人偏に「幸」と書きますが、こちらは意外にも、刑罰としての手かせを意味する文字です。
諸説ありますが、死刑などの思い罰が多々あるなか、手かせ程度で済んだことを、幸い、といったようです。
「僥」と「倖」の組みあわせからなる熟語ですので、気高い幸せ、というところから、転じて思いがけない幸福という意味になったといわれています。
「僥倖」の対義語
思いがけない幸福があれば、思いがけない不幸もあるのが人生。
いつもいいことばかり起こるというのはなかなかありえませんし、逆にいつもいつも、よくないことが起こるわけでもありません。
ピンチはチャンス。
いいようにとらえて人生明るく生きたいものです。
それでは、「僥倖」の対義語を見ておきましょう。
- 「災難」【さいなん】
- 「奇禍」【きか】
「災難」【さいなん】
不意に起こるよくないできごとや災いを意味しています。
「交通事故の影響でバスが遅れるとは、とんだ災難だ」
このように使われます。
思いがけず、不幸なできごとに見舞われる、というところから、「僥倖」の対義語といえるでしょう。
「奇禍」【きか】
あまり聞くことのないことばでしょうか。
「きか」と読み、思いがけない災難を意味します。
「奇禍に遭いながらも命乞いをして、なんとか帰郷することができた」
戦時中などにはこのようなできごとも多くあったのではないでしょうか。
災難に遭うこともあれば、災難に遭ってもなお、「僥倖」としかいいようのないできごとに救われることもあります。
芸術作品における「僥倖」
天啓!など、あまりふだん口にしないことばも多く出てくる漫画、『賭博黙示録カイジ』や、文豪夏目漱石の作品のなかでも「僥倖」は使われています。
聞き慣れないことばほど、文学作品などでは使われている、という例がありますが、語彙を増やしたいときにはこういった作品群を多く知ることで、自分のなかに落とし込んでいくことが、遠回りなようでいて近道であることも多いでしょう。
作品のなかでは、例文のようにぶつ切りのものでなく、それまでの文脈、あらすじのなかでことばが選ばれていますので、すんなりと身につくということもあります。
「僥倖」は、思いがけない幸福を意味することばだとわかりましたね。
友だちがライブのチケットを譲ってくれた、ダメ元で行った先着○名以内のプレゼントがもらえたなど、日常でも「僥倖」を感じる場面はあるものです。
ありがたいことを当たり前だと思わず、「僥倖」と口に出すくらいのほうが、生活が明るく、楽しいものになりそうです。