「佇まい」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
日本人は古来より、自然やそれによって生まれる豊かな文化に恵まれ、その季節の移ろいやもの哀しさを歌に詠んだりと、そこにあるものを見て楽しむという気質があります。
その歌や情景を表すのに使われた言葉は、現代にも数多く受け継がれています。
今回ご紹介する「佇まい」という言葉もそのひとつです。
意味を理解して活用し、文章に深みを持たせましょう。
目次
- 「佇まい」の意味とは?
- 「佇まい」の類語や言い換え
- 「佇まい」の使い方
- 「佇まい」を使った言葉と注意すべき誤用
- 「佇まい」の語源
「佇まい」の意味とは?
「佇まい」とは「立っている様子」を表します。
そこから転じて、「ものの姿そのものや、有り様」や「身を置くところ、生業」という意味もあります。
つまり、人でも物でも、立っていたり、ある場所に存在して留まっている様を指して使います。
人であれば「立ち姿」を指す事が多く、物に関してはそこにある様子に加えて、物がそこにあることで醸し出される雰囲気も合わせて表す事が多い言葉です。
- 「佇まい」の読み
「佇まい」の読み
「たたずまい」と読みます。
送り仮名を間違えないよう注意しましょう。
「佇まい」の類語や言い換え
「佇まい」という言葉には、ただそこにある様子や立っている様子を示すだけでなく、醸し出している雰囲気やオーラを含めて指すことが多く、似たような言葉が他にもいくつもあります。
3つご紹介します。
- 「風格」【ふうかく】
- 「趣(趣き)」【おもむき】
- 「オーラ」【おーら】
「風格」【ふうかく】
主に人に対して使う事が多く、「その人の容姿や態度に表れる品格」を意味する言葉です。
また、物の「味わいや趣」を指して使う事もあります。
「風格」は名詞として使うため、「風格を感じる」「風格がある」という風に使います。
「風格」自体が良い意味を持つ言葉として一般的に認識されており、「風格がある」という表現は褒め言葉です。
どことなく感じることのできる上品さや気高さがにじみ出ているというイメージです。
「趣(趣き)」【おもむき】
主に物に対して使う言葉です。
そのものが自然に感じさせる風情や、しみじみとした面白みや味わいを指す言葉です。
建物や自然、風景などを見て人が「深みがあって素敵だな」と感じたり「独特な味わいだな」と感じた時に「趣がある」という表現を使います。
「面白み」といっても、愉快の意味での面白さではなく、「興味を引かれる」という意味です。
対象となる物の歴史や由来などのバックグラウンドに対して思いを馳せるようなイメージです。
ちなみに同じ読み方の「赴き」というのは、全く違う意味で「ある場所へ向かう」という意味ですので、漢字の誤りには注意しましょう。
「オーラ」【おーら】
「オーラ」と聞くとなんだかスピリチュアルなイメージがありますが、日常生活でよく使う方も多く、一般的に浸透している言葉です。
本来は人や物が発する霊的な放射体、エネルギーを指しますが、それが転じて「人物や物体が発している独特の雰囲気やなんとなく感じられる力、威圧感」を指す言葉として使われています。
「オーラがある」というような言い方をよく耳にしますが、実際に何かその人のまわりに物体が見えるわけではなく、まるで体から何か気を発しているようなエネルギーのような物を感じるという意味で使われています。
その逆で、芸能人を指して使う事が多い「オーラが無い」というのは、特別何か感じる物が無い、つまり「一般人となんら変わりない」という表現です。
「佇まい」の使い方
「立ち姿」と表現するよりも更に文に深みを出す事が出来る「佇まい」という表現。
例文を2つ紹介しますので、参考にして是非文章作成や会話に取り入れてみて下さい。
- 「佇まい」の例文1
- 「佇まい」の例文2
「佇まい」の例文1
「その日本家屋の佇まいは、長く壮大な歴史を感じさせる」
「佇まい」とはそこにある様子だけでなく、そのものが醸し出す独特の雰囲気や味わいも含めて「佇まい」と表現します。
つまり、「その日本家屋が建っているところ」ではなく、「その日本家屋が建っていて、その建っている様子や醸し出している空気」というその一体を「佇まい」で表現しています。
ただそこにある、置いてある物に関して私たちは特に何も感じません。
しかし、「佇まい」という表現にすると、その物から発せられる雰囲気や様子を頭に思い浮かべやすくなります。
ただ置いてあるだけでなく、それだけでまるで絵画のように独特の趣があるというイメージを読み手に湧かせることができます。
「佇まい」の例文2
「彼女の佇まいは上品で奥ゆかしい」
「佇まい」は建物などの物だけでなく人に対しても使える良い表現です。
立っている姿、座っている姿どちらでも良いのですが、どちらかというと「立っている姿」を指す事が多いです。
人が立ちどまっている姿というのは、独特な雰囲気を醸し出しているものです。
背中が丸まっている人、ピンと伸ばしている人、堂々と立つ人、少し気弱そうに立っている人…その人の性格や内に秘めている思いが立ったり座っている様子に表れるものです。
歩みを止め立ち止まっている姿に表れる、視線の向きや体の姿勢は特にその人の内面が際立ちます。
「奥ゆかしい」というのは「慎み深く上品」や「こまやかな心配りが見える」という言葉です。
この文章から読み取れる「佇まい」という表現は、見た目の姿や仕草と、そこからにじみ出る雰囲気や特徴を総合して指しています。
「佇まい」を使った言葉と注意すべき誤用
「佇まい」という言葉の使い方の一例と、よく見られる誤用を紹介します。
正しい表現で使えるようにしっかりと把握しておきましょう。
- 「〜な佇まい」
- 「佇まいを直す」は誤用
「〜な佇まい」
慣用句というわけではありませんが、よく使われる表現です。
「〜」の部分には「閑静」や「立派」や「落ち着いた」などの、状態を表す形容詞が入ります。
使われる場面といえば、住宅の広告です。
「佇まい」という言葉自体に上品さを感じさせるため、1戸建て住宅の売り出しのセールストークとして「〜な佇まい」という言葉が多用されます。
また、人に対しても使う事が出来る便利な表現です。
「佇まいを直す」は誤用
よく「佇まいを直す」や「佇まいを正す」という表現をしている例がありますが、これは誤用です。
「居住まいを直す」もしくは「居住まいを正す」というのが正しい表現です。
「居住まい」というのは、「座っている姿勢」のことを指しています。
主に立っている姿を指す「佇まい」とは逆の表現と言えますね。
「居住まいを直す」や「居住まいを正す」というのは、「神妙な気持ちになって座り方や姿勢を正す、整え直す」という意味です。
「佇まい」の語源
古語に「たたずむ」という言葉があり、それが語源とされています。
「佇む(たたずむ)」とは「しばらくそこにいる」という意味です。
古語として使われている文章からさらに読み解いてみると、ただぼーっとそこにいるのではなく、場の空気や雰囲気とマッチした状態で存在しているというニュアンスで使われています。
そこから「佇む」という言葉が変化し、「たたずまふ」や「たたずまひ」という形になりました。
「たたずまひ」は今と同じような意味で「様子、ありさま」ということを指します。
昔の人も、立ち姿や建物からそこはかとなく醸し出される独特な様子や有り様を、感じ取っていたのでしょう。
いかがでしたか。
普段耳にする機会が多い言葉ですが、昔から使われている言葉だというのは意外だった人も多いのではないでしょうか。
「佇まい」というたった一言ですが、その言葉は非常に説明するのが難しいくらい色々なニュアンスで使われています。
様子を表すだけでなく、そこからにじみ出る何とも言えない空気や雰囲気もひっくるめて「佇まい」とされることもあります。
文脈や会話の流れで臨機応変に理解したい言葉ですね。