「何でもござれ」の意味とは?類語、使い方や例文、英語を紹介!
「なんでもござれ」という言葉を、時折、耳にすることがありますが、「ござれ」という言い回しが、耳慣れない上に、何とも古風な感じで、おまけにそれが、オフィス内の上司の発言だったりすると、「へたなおやじギャグの一つかな」とも思ってしまいそうです。
ところが、これがれっきとした日本語なのです。
目次
- 「なんでもござれ」の意味とは?
- 「なんでもござれ」の類語や言い換え
- 「なんでもござれ」は方言ではない
- 「なんでもござれ」を使った例文や使い方
- 「なんでもござれ」と聞いて思い浮かべるのは嫁入り
- 「なんでもござれ」を分割して解説
- 「なんでもござれ」の英語
「なんでもござれ」の意味とは?
「なんでも」が表しているのは「どんなこと(もの)でも」だと、言葉のままでも、十分、理解できます。
しかし、その後に続く「ござれ」が、「ある」や「いる」、あるいは、「行く」や「来る」の意を表す尊敬語だとは、あまり知られていません。
さらに、語尾が、「ござる」という終止形であれば、「なんでもある」という意味になりそうだ、ということが、何となく連想され、表されている意味に近づきそうです。
ところが、ここでは、語尾が、「ござれ」という命令形になっていますので、「行け」もしくは「来い」という命令語に置き換えてみることで、ようやく「どんなことでも来い」という意味になることが、見えてきます。
それで、現在は、「なんでもござれ」は、「何でも来い」を意味する言葉としてとらえ、もう一歩、進んで「何がこようと、受ける準備がある」とか「何があろうと、受ける覚悟はできている」といった意味合いで使われています。
「なんでもござれ」の類語や言い換え
「何でも来い」もしくは「何がこようと、受ける準備がある」という意味合いで、類語や言い換えの例をさがしても、普通に言う類語という形では、見当たりませんので、類似するような言葉の例をあげます。
- 「どんとこい」【どんとこい】
- 「オールグラウンド」【おーるぐらうんど】
- 「守備範囲が広い」【しゅびはんいがひろい】
- 「オールマイティー」【おーるまいてぃー】
「どんとこい」【どんとこい】
これは、言葉的には似たような表現ですが、「思い切って来い」という意味合いですので、意味的には、少しズレています。
使い方としては「なに、相談があるって言うのか。
お金のことなら無理だが、それ以外だったら、どんとこいだ」のように、使います。
「オールグラウンド」【おーるぐらうんど】
多くの方面のことを巧みにこなすことを意味していますので、「なんでもござれ」と同じ意味合いになります。
使い方としては「Aさんは、こと仕事にかけては、オールグラウンドなので、どんなことでも、安心して任せられるよ」のようになります。
「守備範囲が広い」【しゅびはんいがひろい】
野球をする時の守りをたとえに使って、いろいろなことのホローや作業、処理といったことが出来ることを意味している言葉です。
使い方としては「Bさんは、気軽に楽しめる遊びの守備範囲が広いから、文化祭の実行委員に、是非、加わってもらいましょう」のように、気軽に使えそうですが、引き合いに出す相手の守備に当たる部分、つまりは、得意分野を知っておかないと、的外れな言い回しとなりますので、注意が必要です。
その意味では、意外と使うのは、やっかいかもしれません。
「オールマイティー」【おーるまいてぃー】
スポーツ万能や学問もスポーツもできる、天が二物を与えた、全てが万能の人も「オールグラウンド」に似て、「なんでもござれ」の世界に入る人です。
使い方としては「今回の企画は、今までと違って多方面の部署に関わるので、ここは一つ、顔の広い、何事もオールマイティーのCくんの力を借りたい」などと、相手を認める方向で使います。
「なんでもござれ」は方言ではない
「ござれ」という言葉が、ふだん目にしないし、耳にもしない言葉なので、どことなく地方っぽいというか、田舎っぽい感じがします。
確かに、中世期後半頃から使われている言葉ですから、古い言葉ではあります。
しかし、歴然と、普通に使われている辞書には、載っている言葉です。
さすがに「なんでもござれ」という一文では、載っていません。
ただし、広辞苑や字源、大辞林といった大型の辞書にも、同様に一文では記載されていません。
載せられているのは、どれも「なんでも」と「ござれ」に分け、特に「ござれ」は、辞書の約束に従って、終止形の「ござる」に形を変えて記載されています。
凡例として文学作品の一部が使われていますので、正しい使い方も知ることができます。
字面はあまり見かけませんが、方言ではありません。
「なんでもござれ」を使った例文や使い方
「なんでもござれ」の末尾に「だ」を加えて「なんでもござれだ」とすると、日常生活の中でも、普通に使われている言葉だと分かります。
- 酒豪を例にして
- バイリンガルを例にして
- 末尾に「だ」が付く場合を例にして
酒豪を例にして
アルコールにめっぽう強いAさんは、ビールだろうと、焼酎だろうと、ウィスキーだろうと、およそ酒と名のつくものものなら、「なんでもござれ」の酒豪です。
バイリンガルを例にして
国際結婚の両親のもとで生まれたBさんは、中学生まで、海外で育ったこともあって、英語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、スペイン語、それに、ラテン語と「なんでもござれ」のバイリンガルです。
末尾に「だ」が付く場合を例にして
新たなビジネスで何かと問題が起きるオフィスの中で、突然、課長が、「よぉし。こうなりゃ、「なんでもござれ」だ。矢でも鉄砲でも、持ってこいってんだ」と、鼻息を荒くして宣言しました。
「なんでもござれ」と聞いて思い浮かべるのは嫁入り
「なんでもござれ」を聞くと、お嫁入り、いわゆる結婚式が、思い浮かぶというのは、いかにも唐突な感じがして、微妙な違和感を覚えます。
ところが、昨今の結婚式は、披露宴を含めて「なんでもござれ」のサービスを提供できる、ホテルや結婚式場であるか否かが、若い人達の結婚式場選びの重要なポイントとなっています。
参列者の面前で式をあげる、仲人なしの人前式も普通になってきた現在では、結婚式も披露宴も、ホテルや式場側の言いなりになるのではなく、自分たちでプロデュースし、引き出物はもちろんのこと、ウエルカムボードや席札といった小物にまで、細かく注文をつけるのが普通になってきました。
従って、受けるホテルの側も、20人程度のごくごく親しい人だけの披露宴向けの会場から総勢200名を越すような披露宴会場、あえて畳敷きの部屋で行う純日本式の会場、館内のレストランを貸し切ってのディナーパーティ形式の披露宴まで、会場一つをとっても、実に、様々な会場が準備されています。
また、同じホテル内に、衣装室、美容室、エステ、写真スタジオ、フィトネスクラブといった施設と共に、日本料理店、イタリアンのレストラン、フランス料理や飲食店と全てが一カ所でまかなえるようになっていて、まさに「なんでもござれ」状態です。
「なんでもござれ」を分割して解説
- 「なんでも」
- 「ござれ」
「なんでも」
「なんでも」を一語の副詞としてとらえる場合と「なに(なん)」+でも」の連語としてとらえる場合とで、表す意味は、大きく違ってきます。
話題の流れからみて、ここの場合には、連語としての意味でとらえますので「どれでも。どんなことでも。」という解釈になります。
ちなみに、副詞でとらえると「はっきりしないがどうやら。事情のいかんにかかわらず、どうしても。なんとかして」という意味になります。
「ござれ」
「ござれ」は「ござる」の活用した形で、命令形になりますが、ここでは「ござる」の意味で記載します。
「ござる」は、もともとは「ござある」が転じたことばですが、様々な形で使用される用法の広い待遇語です。
動詞で使う場合には、丁寧語にも尊敬語にも用いられます。
「ある」「いる」の意の尊敬語。
「行く」「来る」の意の尊敬語。
「ある」「いる」の意の丁寧語。
となります。
補助動詞で使う場合には、「ある」「いる」の意の尊敬語。
「ある」の意の丁寧語、となります。
ここでは、動詞として使われていますので、動詞の場合の「行く」「来る」が、意味として、最も適当だと考えられます。
その言葉と「なんでも」がつながって一つの言葉になっていますので、「何でも」「来い」という意味で使われていると考えられます。
「なんでもござれ」の英語
英訳は、訳した人によって様々ですので、三つの例を記載します。
“Be everything be everyone”(全てであってください 誰でもであってください)
“Anything have it”(何でも持ちます)
“Be everything OK”(何でもオーケー)
( )の中は、直訳した言葉です。
上段の英訳は、全てであること、誰でもあることを示していますので、どんなことでも、誰のことでもと言った意味で、「何でも」が、表されていますが、「受ける」というニュアンスに欠けているようです。
中段の英訳は、何でも持つというので、ストライクゾーンが広いこと、つまり、許容範囲が広いことを表していますので、「何でも来い」「何でも受ける準備がある」というこの言葉の意味に、より近いように思えます。
また、haveには、多くの意味があるので(何でもやります)とも訳せるかもしれません。
下段の英訳は、この言葉の意味を見事に言い当てています。
何でもオーケーは、まさに「何でも来い」の心境ですし、何が来ても「受ける」という姿勢そのものを表しています。
ただ、オーケーという言葉の響きが、即、「受ける準備がある」という、ある種の責任ある言葉の代わりになるかという点では、オーケーのもつ言葉のイメージから、再考の余地はあります。
「なんでもござれ」は、改まった会議の場などでは、使うのは控えた方が無難な言葉です。
本来の意味するところは、「なにが来ても受ける準備がある」「なにが来ても受ける覚悟がある」と、前向きで、自分の力量にも自信をもった、責任のある言葉です。
しかし、別の見方をすると、さんざん手を尽くして、もう打つ手がなくなり、こうなれば何が来ようとなすがままという、ある種の開き直りの気持ちを含んでいる場合があるからです。
また、「ござれ」という表現もきちんとした場には、現在ではそぐわない言葉です。
しかし、意味的には、深いものがあり、イベントなどの企画準備が整った時点で、確固たる自信とそれ相応の裏付けをもって、担当の責任者が発すれば、集団を鼓舞し、結束させ、イベントを成功に導く力を生み出すパワーをもっている言葉でもあります。