「嗜虐心」の意味とは?類語や使い方、例文を紹介!
「嗜虐心」と聞いても、どのような心なのか見当がつかない人は多いでしょう。
難しい漢字であるため、読むことさえも、ままならないかもしれません。
詳しくみていきましょう。
目次
- 「嗜虐心」の意味とは?
- 「嗜虐心」の類語や言い換え
- 「嗜虐心」の使い方
- 「嗜虐心」の例文
- 「嗜虐心」の対義語や反対語
「嗜虐心」の意味とは?
「嗜虐心」とは「痛めつけて虐げることを好む傾向や心のこと」を意味しています。
分かりやすく言うと、誰かが苦しんでいる様子を見て、興奮して喜びを感じたり、満足する人のことです。
これを聞いて「怖い」と感じる人は多いでしょう。
人の痛みを分からないばかりか、そこに喜びを見いだすとは、人として疑ってしまう性質を持つ人だと言えます。
実際にはこのような人は、いるのでしょうか。
もし、いたとしても犯罪者予備軍か変質者だろうと思うかもしれません。
しかし、残念ながら、人は誰しも多かれ少なかれ、この「嗜虐心」を持っていると言えます。
例えば、お笑い芸人が大量のワサビ入りのお寿司を食べてのたうち回るシーンなどがありますが、これは人の「嗜虐心」をくすぐったお笑い芸人の技だと言えます。
お笑い芸人が痛がる様子や苦しむ様子などを見て、思わず笑ってしまうことがあるかと思いますが、これも立派な「嗜虐心」であると言えます。
また、「嗜虐心」というと難しく考えてしまいますが、「ドSのこと」といえば、意味がピンとくるでしょう。
よく意地悪な人や抑圧的な人を「ドS」という言葉で現しますが、この意味と「嗜虐心」は非常によく似ています。
「ドS」という言葉は、よく耳にする言葉なので、この言葉に置き換えて意味を考えると理解しやすいでしょう。
- 「嗜虐心」の読み方
「嗜虐心」の読み方
「嗜虐心」は「しぎゃくしん」と読みます。
「嗜」(し)は「嗜好」(しこう)の意味を、そして「虐」(ぎゃく)は「虐(しいた)げること」を意味します。
「嗜」という字は「嗜好品」(しこうひん)、「嗜眠」(しみん)などの言葉にも使われ、物事を好んでたしなむことを意味しています。
「虐」という字は、「虐待」(ぎゃくたい)、「虐殺」(ぎゃくさつ)、「暴虐」(ぼうぎゃく)などの言葉にも使われ、怖い表現に良く使用されている漢字です。
人を傷めつけたり、むごく扱うことを意味しています。
そして「心」(しん)とは「○○の心(こころ)」という意味です。
人の心の中の話であることを意味しています。
「嗜虐心」の読み方は難しいです。
すんなりと読める人の方が少ないでしょう。
しかし、なんとなく漢字をみればその意味は理解できるかもしれません。
「嗜」「虐」「心」という3つの言葉を一つずつ切り離してみると、見たことがある字で構成されていることに気づくのではないでしょうか。
その漢字の一つずつの意味を考えれば、どのような意味なのか見当がつくはずです。
「嗜虐心」の類語や言い換え
「嗜虐心」の類語や言い換えについてみていきましょう。
- 「サディスティック」【さでぃすてぃっく】
- 「暴力的」【ぼうりょくてき】
「サディスティック」【さでぃすてぃっく】
「サディスティック」とは「苦痛を他人に与えることで喜び、または性的満足を得ること」です。
「サディスティックな人」といえば、「苦痛を他人に与えることで喜び、または性的満足を得る人のこと」を意味します。
「嗜虐心」を持つ人と、なんら変わりない意味となります。
しかし、僅かながら、あえて違いを述べるとしたら、「サディスティック」の方は常にその性質を持っている傾向があることでしょう。
その人のもともとの生まれ持った性質が人を傷めつけることに喜びを持つ性質であり、これからもその性質と共に生きていくことを意味する傾向にあります。
しかし、「嗜虐心」の方はというと、常にある訳ではなく、一瞬、何らかの状況でそのような感情になってしまったという一過性の性質であることを意味する傾向にあります。
その「嗜虐心」が常にその人自身にあるわけではなく、何かのきっかけや状況でそのような心が芽生えてしまったという意味だと言えます。
意味としては「サディスティック」も「嗜虐心」も大体同じ意味ですが、ほんの少しだけニュアンスが違う言葉だと言えるでしょう。
「暴力的」【ぼうりょくてき】
「暴力的」の意味は「殴る蹴るなどの乱暴を働くこと」であり、「それにより相手に怪我や苦痛を与える様子」を表しています。
自分の起こした行動によって、相手が苦しむ様子などは、まさに「嗜虐心」と同様の意味を持っていると言えます。
ですが、まるっきり類語かというと、それは違います。
「暴力的」という言葉は、どちらかというと肉体的な暴力のことを指す傾向が強いです。
今でこそ、言葉によって人の心を傷つけることを「言葉の暴力」などと表現していますが、「暴力を振るわれた」と聞いたとき、真っ先に思い浮かべるのは「精神的な言葉による暴力」ではなく、「肉体的な暴力」の方です。
このように「暴力的」という言葉には、「嗜虐心」に比べ、「肉体的な暴力」であることを指す意味合いが強いといえます。
また、もう一つ違いを述べるとしたら、「暴力的」はただ単に人を傷めつけることを意味しますが、「嗜虐心」の方は人を傷めつけるばかりではなく、そこに喜びを見いだしているところに違いがあります。
「暴力的」という言葉には、「嗜虐心」のような人を傷めつけてそこに喜びを感じるといった変質的な性質は持ちません。
「嗜虐心」の使い方
「嗜虐心」の使い方についてみていきましょう。
「嗜虐心」の使い方のポイントには、2つのポイントがあります。
まず1つ目のポイントは、「嗜虐心」を持つものが人や動物といった生き物であることです。
生きているものがそのような性質を持つことを表す言葉であるため、人形などには使いません。
「心」という言葉からも察することができるように、「心」がある生き物にのみ使います。
2つ目のポイントは、自分の方が優位で、相手が自分よりも下の立場であるときに使う傾向があるということです。
部下や年下、仕事のできない人、口答えできない弱気な性格の人といった、自分に抵抗することができないような人に対して使用することが多いです。
自分よりも立場が上の人、あるいは強い立場の人にはあまり使いません。
もしも、自分よりも立場が上の人、あるいは強い立場である人を傷めつけたいと思う心があるのなら、それは「嗜虐心」ではなく、「反逆心」(はんぎゃくしん)などといった言葉が適切でしょう。
そして、強い立場の人がもがき苦しむ様子を見て満足する心は「優越感」などと表現されるのかもしれません。
「嗜虐心」とはあくまで自分よりも弱い立場の人に向けて使う傾向があります。
この2つのポイントを押さえて、ぜひこの言葉を使ってみましょう。
「嗜虐心」の例文
「嗜虐心」の例文についてみていきましょう。
- 「嗜虐心」の例文1
- 「嗜虐心」の例文2
「嗜虐心」の例文1
「ときに子供は残酷だ。その嗜虐心を満たそうと、小さな虫を理由もなしに何匹も傷めつけることがある。」
(ときに子供は残酷だ。痛めつけることで心を満足させようと、小さな虫を理由もなしに何匹も傷めつけることがある。)
小さな子供のときは、蟻をふんだり、トンボの羽をちぎってみたりして、虫をオモチャ代わりに遊ぶことがあります。
小さな虫の体から出る血しぶきを、まるで楽しいイベントかのように面白いと感じ、喜ぶ姿は、まさに小さな子供の心に宿る「嗜虐心」であると言えます。
このときの子供は虫を傷めつける行為そのものが遊びとなっており、虫を痛めつければつけるほど、心が満たされていきます。
この例文を見ても分かる通り、で説明したように、「苦しむ様子を見て喜ぶ感情があること」と「自分よりも弱い立場のものに抱く感情であること」という2つの要件を満たしています。
適切な「嗜虐心」を使った例文であると言えるでしょう。
「嗜虐心」の例文2
「あまり弱気な姿は見せるな。彼の嗜虐心を煽ることになるぞ。」
(あまり弱気な姿を見せるな。彼の、弱いものを傷めつけたいという変質的な感情を高ぶらせることになるぞ。)
弱いものをいじめることが大好きで、それをすることで満足するという変質的な性質を持つ彼のことを話しています。
この例文も条件を満たしており、「苦しむ様子を見て喜ぶ性質を持っていること」と「自分よりも弱い立場のものに抱く感情であること」という2つの要件を満たしています。
「嗜虐心」の対義語や反対語
「嗜虐心」の対義語や反対語についてみていきましょう。
- 「マゾヒズム」
- 「嗜虐嗜好」【しぎゃくしこう】
「マゾヒズム」
「マゾヒズム」とは、被虐性欲のことを意味します。
「肉体的・精神的苦痛を与えられたり、羞恥心や屈辱感を誘導されることによって性的快感を味わうこと」を意味します。
また、「そのような状況に自分が立たされることで性的興奮を得る性質のこと」を意味しています。
「嗜虐心」が相手に苦痛を与えることで快感を持つ心を指すのに対し、「マゾヒズム」とは「自分が苦痛を与えられることで性的快感を覚えること」を意味します。
二つの言葉は相反する言葉として捉えることができるでしょう。
しかし、「嗜虐心」に比べると、「マゾヒズム」は性的にのみ快感を得る性質であるところが正反対の言葉だとは言えません。
「嗜虐心」は性的快感だけでなく、単に苦痛を与えることに喜びを感じる感情をも含んでいます。
そういった意味で、完全に正反対の言葉であるとは言えません。
「嗜虐嗜好」【しぎゃくしこう】
「嗜虐嗜好」とは、「相手に苦痛を与えることで興奮・快感を覚える性癖のこと」を意味します。
「嗜虐心」とは怖い意味をもつ人の性質であることが分かりました。
あまり良い意味の言葉ではないので、使うのは控えた方が良いかもしれません。
「君は嗜虐心のある人だね。」
などと言われても、嬉しくありません。