「やぶさかではない」の意味とは?敬語?語源、英語を紹介!
「〜するのにやぶさかではない」という表現を耳にしたことはあるでしょうか。
なんとなく堅苦しい雰囲気もあり、あまり日常会話で使う言葉ではないですよね。
「それくらい聞いたことあるよ」と思った方もいるかもしれません。
では「やぶさかではない」の正確な意味についてはどうでしょうか。
正確な意味を聞かれるとよくわからないという方も少なくないでしょう。
しかし、日本語を使って生活する以上いつかは使う機会があるかもしれません。
そんな時に誤った使い方をして恥ずかしい思いをしないためにも、ここで正しい意味や使い方を確認していきましょう。
目次
- 「やぶさかではない」の意味とは?
- 「やぶさかではない」の類語や言い換え
- 「やぶさかではない」の語源
- 「やぶさかではない」を使った例文や使い方
- 「やぶさかではない」と「まんざらではない」の違い
- 「やぶさかではない」の英語
「やぶさかではない」の意味とは?
「やぶさかではない」は「〜するのにやぶさかではない」という形で使われることが多く、「努力を惜しまず〜する」または「ためらわず〜する」という意味を持ちます。
どちらの意味でも物事に対し快く、思い切りよく取り組む積極的な態度を示しています。
「しぶしぶ〜する」や「仕方なく〜する」といった意味はもたないので注意しましょう。
- 「まあ、べつに嫌ではない」は誤用
- 「やぶさか」とは?
「まあ、べつに嫌ではない」は誤用
この言葉において注意してほしいポイントは「しぶしぶやる」とか「嫌ではない」といったような消極的・曖昧な意味はもたないということです。
「やぶさかではない」という言葉は上で説明したように、物事への積極的な姿勢を示しているのです。
「〜ない」というと消極的な印象を覚えてしまいますが、「やぶさかではない」は積極的だということを忘れないでください。
積極性の有無という点で「まあ、べつに嫌ではない」という表現のニュアンスは「やぶさかではない」と決定的に異なっています。
「まあ、べつに嫌ではない」という気持ちを表現するのに「〜するのにやぶさかではない」という言葉を使うのは明らかな誤用です。
あなた自身にその気がなくても「やぶさかではない」を使えば、相手には「あ、この人はすごくやる気があるんだな」と思われてしまうので気を付けましょう。
また相手が「〜するのにやぶさかではありません」と言ってきたときに「あれ、あまり乗り気ではないのかな」と気にする必要もありません。
「まあ、別に嫌ではない」というニュアンスで使用するのは誤用であると説明しましたが、辞書によっては「反対や不満があるというわけではない」と表記されている場合もあります。
時代にそって意味にズレが生じている可能性もありますが、今のところはそのような使い方を避けるのが妥当でしょう。
「やぶさか」とは?
「やぶさか」は漢字で「吝か」と書きます。
この漢字もあまり目にする機会はありませんが熟語だと「吝嗇(りんしょく)」があります。
吝嗇とは「過度に物惜しみすること」です。
この熟語の意味からも推測できるように「吝か」は「物惜しみするさま」を指します。
また、もう一つの意味として「未練なさま・思い切りの悪いさま」があります。
したがって否定を伴い、「やぶさかではない」という表現になることで「物惜しみせず〜する」「思い切りよく〜する」という意味になるのです。
「やぶさかではない」の類語や言い換え
ビジネスの場面や書き言葉であれば「やぶさかではない」という言葉を使っても違和感はありませんが、多用しすぎれば堅苦しい印象を与えてしまいますし、日常会話で使うには仰々しいですよね。
そこで「やぶさかではない」の類語や言い換えをいくつか覚えておきましょう。
- 「喜んで〜する」
- 「〜したい」
- 「〜しても構わない・反対しない」
「喜んで〜する」
「惜しまず〜する」という意味であれば「喜んで〜する」という言い方が最もシンプルで使いやすいでしょう。
「協力するのにやぶさかではない」という文章であれば「喜んで協力する」と言い換えることができます。
「〜したい」
日常会話として使うのでああれば単純に「〜したい」と言い換えて差し支えないでしょう。
非常に簡潔でわかりやすい言い換えです。
ただしビジネスの場面で使うには少しストレートすぎて丁寧さに欠けますね。
敬語として使う場合には「ぜひ〜させてください」「ぜひ〜させていただきます」といったようにさらに丁寧に言い換える必要があります。
「そのミーティングに参加することにやぶさかではありません」という文章は「ぜひそのミーティングに参加させていただきます」と言い換えましょう。
「〜しても構わない・反対しない」
どちらかというと消極的な表現にも見えますが、一応これも「やぶさかではない」の類語のようです。
「やぶさかではない」の語源
「やぶさかではない」は「吝か」の否定であると説明しました。
では「やぶさか」の語源は何なのでしょうか。
「やぶさか」の語源は、物惜しみするという意味の「悋がる(やふさがる)」やけちであるという意味の「やふさし」と同じであると考えられています。
「悋がる」や「やふさし」といった言葉は平安初期の書物にも見られます。
これらの言葉が時代を経るにつれて否定とセットで用いられるようになったといえるでしょう。
すなわち語源から考えても「やぶさかではない」の意味は「物惜しみせず〜する」というのが適切であるといえるでしょう。
ちなみに「吝」によく似た「悋」という字ですが、これも物惜しみをするという意味を持ちます。
他にも「ねたむ」という意味を持ち「悋気は恋の命(りんきはこいのいのち)」という表現があります。
これは「やきもちを焼くのは恋をしている証拠であり、やきもちを焼かれなくなったらおしまいだ」という慣用表現です。
文章を書くときなどにさらっと使いこなすことができるとかっこ良いでしょう。
「やぶさかではない」を使った例文や使い方
新しく学んだ言葉を使いこなすコツは例文もセットで覚えることです。
どのような文脈で使うのか知っておくことで違和感なく自然に使うことができます。
「やぶさかではない」を使った例文をいくつか確認してきましょう。
- 「やぶさかではない」の例文1
- 「やぶさかではない」の例文2
- 「やぶさかではない」の例文3
「やぶさかではない」の例文1
「我々はあなたに協力するのにやぶさかではない」
この例文では「努力を惜しまない」というニュアンスで使われています。
「やぶさかではない」の例文2
「制度の抜本的な見直しにもやぶさかではない」
この例文の場合は「喜んで〜する」という意味でも「〜するのに躊躇しない」という意味でも解釈することができますね。
「やぶさかではない」の例文3
「その会議に参加することにやぶさかではありません」
ここでは「ぜひ〜したい」という意味で使われています。
「やぶさかではない」と「まんざらではない」の違い
「〜ない」という形をとる表現で「やぶさかではない」と混同しがちなものに「まんざらではない」があります。
「まんざらではない」を漢字に直すと「満更ではない」となります。
「満更」という言葉も単体で使うことはあまりありませんね。
満更は「全く・ひたすら」という意味を持ちます。
「まんざらではない」を直訳すると「全く〜ではない」となります。
したがって「まんざら嫌ではない」とはひたすら嫌というわけではない、つまり「結構気に入っている」という意味です。
慣用句の場合は「まんざらでもない」となります。
これは「必ずしも悪くはない」という意味です。
「褒められてまんざらでもない様子だ」と言えば「褒められて結構嬉しそうだ」という意味になります。
以上のように「まんざら〜ではない」や「まんざらでもない」という表現は「かなり気に入っている」ということを遠回しにいう言葉です。
一方「やぶさかではない」は「惜しまず〜する」という意味です。
この二つの言葉はよく似ていて間違えやすいですが意味は違うので注意して使うようにしましょう。
「やぶさかではない」の英語
「やぶさかではない」を英語に訳すとどうなるでしょうか。
ここまで説明してきたように同じ「やぶさかではない」という言葉であっても文脈によって意味は微妙に異なります。
ここではその意味を大きく二つに分けてそれぞれの英訳を紹介します。
6‐「努力を惜しまず〜する」「快く〜する」「ぜひ〜したい」という意味の場合
一般的には“I'd love to”や“be willing to ~”といった表現が使われます。
「私は○○に協力するのにやぶさかではない」という時には
“I will not grudge 〇〇 my cooperation.”と言うこともできます。
「ためらわずに〜する」という意味の場合
直訳すると“I don't hesitate to ~”となります。
また“without hesitation”という表現でも良いでしょう。
この記事では「やぶさかではない」の意味を中心に類語や例文を中心に紹介してきました。
皆さんはこの言葉を正しく使えていたでしょうか。
「この言葉を初めて知った」という人はもちろんですが「なんとなくでしか意味を理解していなかった」という人もいることでしょう。
日常会話の中で少し使い間違えるくらいであればそれほど問題にはなりませんが、ビジネスシーンで誤用したり誤解したりするとコミュニケーションの妨げになってしまう恐れがあります。
知っていて損はないですからこれを機に「やぶさかではない」という言葉をボキャブラリーの中に追加しておきましょう。
また「やぶさかではない」にも「まんざらではない」にも言えることなのですが、「〜ない」という表現を使うとどうしても消極的なイメージを抱いてしまいますよね。
積極的な態度を表す言葉であるにもかかわらず敢えて「〜ではない」という否定の形を使うところにも日本語の奥ゆかしさのようなものがあらわれているようです。
直接的な表現を避け、遠回しに表現する「婉曲」は非常に日本語らしいといえるでしょう。
そのことを踏まえると「やぶさかではない」という言葉を使いこなせることはかっこいいですが、使う状況についてはよく考えた方が良いかもしれません。
消極的な意味として誤解している人も少なくありませんから、せっかく正しく使っていても相手に意味が伝わらないという可能性もあります。
誤解されることなく、確実に伝えたい場面であれば「喜んで〜する」と言い換えた方が無難です。