「殺伐とした雰囲気」の意味とは?英語や職場での「殺伐」とは?
「殺伐」という言葉を聞いてまずどんな情景が目に浮かぶでしょうか。
日本語というのは難しいもので、習ってきた言葉、環境、教えた人によって若干ニュアンスが変わってしまうため、同じ言葉でも聞く人によってはまったく違う意味に捉えてしまう事があります。
また、使われるうちに誤用されている意味の方を正とされ、本来の意味から外れて変わってしまうこともあります。
そんな日本語の中でも、耳にした人の8割が悪いイメージとして捉える「殺伐」という言葉について焦点を当ててお話ししたいと思います。
目次
- 「殺伐とした雰囲気」の意味とは?
- 「殺伐」の類語や言い換え
- 「殺伐とした雰囲気」の正しい使い方
- 「殺伐とした雰囲気」の職場はこんな状態
- 「殺伐」の反対語
- 「殺伐とした雰囲気」の英語
- 「殺伐」を使ったその他の言葉
「殺伐とした雰囲気」の意味とは?
誰しもこの言葉を聞くと、悪い状態を思い浮かべるかと思います。
漢字もなんだか物騒な「殺」と「伐」が並んでおり、良くないイメージが伝わってくる言葉です。
実際の意味はそこまで物騒ではなく、「ピリピリと緊迫している様」や「余裕がなく荒れている状態」を表しています。
活気がなく、荒れていて張り詰めている空気感が漂っている状態です。
日常生活でもよく耳にするほど、一般的に浸透している言葉です。
忙しく過ごす場所、他人との交わりがある場所などの「職場」や「学校」での様子を表す際に、表現の一つとして使われています。
「殺伐」の類語や言い換え
- 「荒廃」【こうはい】
- 「殺気立つ」【さっきだつ】
- 「荒む」【すさむ】
「荒廃」【こうはい】
「殺伐」と聞くとどうしても、一触即発のような緊迫した状態を思い浮かべがちですが、実は「潤いがなく、荒れていてあたたかみがない」という意味も含んでいます。
そういった意味から荒れはてて潤いがないという意味では、「殺伐」と同義となるのが「荒廃」という言葉です。
どちらかというと物事の状態に対して使うため、人の雰囲気や様子にはあまり使用しません。
「荒廃した世界」、「荒廃した建物」などその物や事柄の状態を表します。
「殺気立つ」【さっきだつ】
「殺伐」という言葉自体には、「人を傷つけるかのような」という意味があり、似ている言葉の表現として「殺気立つ」という言葉が挙げられます。
顔つきや態度が荒々しく、敵意がむき出しになっている状態です。
誰も触れずにそっとしておこう、とまわりから離れられてしまうような状態です。
自分では使わず、他人から見てどう見えるかという表現として使われることが多い言葉です。
「荒む」【すさむ】
やけを起こして荒れている時によく使われるのが「荒む」という言葉です。
荒廃と似ているようで言葉を使う対象が違い、「荒む」という言葉は人の気持ちや態度に使用します。
反抗的なイメージの言葉で、普段や元々は良い行いをしていた人が突然荒れてしまった時に「荒んでしまった」と使われます。
未成年が何かしら不良行為に走ってしまった時にもよく耳にしますが、完全に悪に走っているというよりは一時的に陥っているという意味が強い言葉です。
「殺伐とした雰囲気」の正しい使い方
「殺伐とした雰囲気」という言葉には先述したように「潤いやあたたかみがない」という意味も含まれており、緊張状態だけではなく冷たい空気に対しても使われます。
その場にいる人たちの心理状態に余裕がなく、他人に気遣いができない、もしくは気遣いがないような荒れた状態を示します。
例:殺伐とした雰囲気に気押され、冗談も言い出せなかった。
上記のようにピリピリと痛い空気にさらされているような場合に使います。
ほがらかな雰囲気とは対照的です。
「殺伐とした雰囲気」の職場はこんな状態
- 繁忙期で余裕がない
- 一部の不仲がまわりに影響している
- 上司の叱咤が飛び交う
繁忙期で余裕がない
どんな職種にもそれぞれに繁忙期が存在します。
忙しい状態が続くと、人は自分の事に精いっぱいで他人の事まで気遣う余裕を失くしてしまいます。
大抵そういう場合はその職場みんなが何かしら抱えて忙しい状態の為、余裕なくあくせく働いている内に口数も少なくなり、ちょっとしたミスや問題など、仕事の進行に悪影響がでる事柄に敏感になっていきます。
普段温厚な人でも、一息つける暇がない状態が続くとどうしてもギスギスした雰囲気を醸し出してしまうものです。
一部の不仲がまわりに影響している
職場には、いろんな環境で育ってきた他人同士が集まり、同じ目標を持ってそれぞれが必要な仕事をします。
それぞれにやり方や信条があり、時にはそれが衝突する原因となって人間関係にトラブルが生じることがあります。
犬猿の仲、という言葉もあるようにどう頑張っても分かりあえない人たちもいます。
「仕事は仕事」と割り切っていても、どうしても隠しきれない負の感情がまわりへ伝わり、察したまわりの人々が静観すると、シーンとした空気になりがちです。
結果、その場全員が仲が悪いかのようになっていまい、殺伐とした雰囲気と揶揄されることもあります。
上司の叱咤が飛び交う
どんな業界も生き残りをかけて日々社員ひとりひとりが一生懸命仕事をしています。
社員の成績がダイレクトに会社の存続にかかわる業種もあるでしょう。
競争社会の波に揉まれた熱い気持ちを持った会社の上司は特に、社員にも毎日厳しく叱咤激励する場合もあるようです。
毎日そんな状態では、だんだんと不満や不平を抱く社員もいることでしょう。
上司も同僚もライバルで味方がいないような、仕事以外では交流が無く荒んで余裕のない職場…まさに「殺伐とした雰囲気」と言えます。
よく求人情報にも載っている「アットホームな職場」という言葉とはうってかわって真逆です。
「殺伐」の反対語
穏やかであることや、安らぎ、あたたかみといった言葉が反対語となります。
人同士が交流を深め、お互いに言葉や気遣いを交わしているようなイメージです。
「殺伐とした雰囲気の職場」に絡んできますが、仕事をはじめ社会で生き残るために必死になっている様子とは真逆で、人間が持つ優しさを感じられるような言葉が反対の意味として挙げられます。
仄々(ほのぼの)という言葉がもっとも近いでしょう。
そのため、よく「殺伐とした雰囲気なのに●●さんはほのぼのしている」などと、対照として用いられることが多いです。
「殺伐とした雰囲気」の英語
“savage atmosphere”というのが一般的です。
“savage”というのは野蛮、残酷という意味ですが、スラングとしても使われます。
普通の人にはできない危ないことをする人に対して称賛の意味で使用します。
「まともじゃない奴」というスラングです。
また、“without (any) tenderness”とも表現します。
直訳すると「優しさが無い」という意味です。
本来人が持つ優しさを失って、野蛮で荒んだ状態である、というのが英語でもよく表われています。
「殺伐」を使ったその他の言葉
- 殺伐とした部屋
- 殺伐とした世の中
- 殺伐とした気持ち
殺伐とした部屋
荒れはてている状態としても使われることの多い言葉ですが、物が無くがらんとした部屋を指して使う事もあります。
物があり満たされている状態とは逆で、殺風景で何もなく、さみしい空気の部屋を表します。
やはりこれも「殺伐」と同じで、先述したように「あたたかみのある部屋」「安らぐ部屋」と逆の意味で使われます。
おもしろみがなく、興ざめするような何もない部屋です。
意味も似ていますが、殺風景にも殺伐と同じ「殺」という漢字が含まれています。
殺伐とした世の中
部屋に関してもそうですが、満たされず荒れた状態の世の中を示す際に使います。
明るいニュースを聞く事が減り、治安が悪くなってくるとニュースや書物で使用される頻度が高くなります。
残酷な事件のイメージが強いですが、実際は細々とした部分で不満がたまっている人々の暗い感情が世の中にあふれている様を表しています。
就職できない、収入が低い、政治家の活動に納得がいかない…色々な不平や不満を相談する相手がおらず、それぞれが内に抱えて鬱々と過ごしているような状態です。
殺伐とした気持ち
自分が抱いている感情や気持ちが荒れて、笑ったり泣いたりなどうまく表に出す事が出来ない気持ちを表します。
大きなストレスや疲労が原因となり、どんどん積み重なった結果普段は感じることのない怒りや苦しみが心に広がっている状態です。
他人と関わることが辛く感じられ、ちょっとした言動にいら立ちを覚えます。
普段なら流せるようなくだらないことにも敏感に反応してしまい、まるで追い詰められているように感じます。
普段の生活で満たされない事が続いたり、余裕がなくなってしまった時に感じる事の多い気持ちです。
いかがでしょうか。
殺伐、といわれると一触即発のイメージがどうしてもありますが、潤いがなく荒れている状態といえます。
良くないイメージばかり抱きがちの言葉ですが、使われる場面は、ずっと永続的にではなく「一時的に殺伐とした状況に陥ってしまっている場合」に使われることが多い言葉です。
気付かないうちに忙しさに追われて荒れてしまっている自分に潤いと余裕を与えなさいという警鐘を鳴らしてくれている言葉なのかもしれません。
穏やかに、ほがらかとした気持ちで毎日過ごせるようにしたいところです。