「忌憚のない意見」の意味とは?類語、使い方や英語を紹介!
日本語の中には日常会話でよく使う表現のほかにも、ビジネスシーンで汎用性の高さを発揮する言葉が多く存在します。
社会人として一般常識を疑われてしまわないよう、使い方や意味を把握してうまく活用したいものです。
また、目上の方や上司、取引先など使う相手によって正しい使い分けができるようにしておきましょう。
今回ご紹介する「忌憚のない意見」という言葉も、使い勝手の良いビジネス用語ですが使う相手を間違うと失礼にもなりかねません。
語彙力を高めるだけでなく、円滑に仕事を進めるためにも意味や用法を正しく理解しておきましょう。
目次
- 「忌憚のない意見」の意味とは?
- 「忌憚のない意見」の類語
- 「忌憚のない意見」の使い方
- 「忌憚のない意見」の英語
- 「忌憚のない意見」の言い換え
「忌憚のない意見」の意味とは?
ストレートに意味をかみ砕くと「遠慮せずに言う意見」や「思ったそのままの意見」を意味します。
「忌憚」とは「遠慮」や「避ける」、「いみはばかる」という意味を持つ言葉です。
遠慮や避けるについてはイメージがつきやすいですが、「はばかる」というのは「恐れ慎む」ということです。
難しく聞こえるかもしれませんが、つまりは「遠慮や配慮する」という事です。
そこに否定の表現である「ない」が組み合わさることで「遠慮のない」「慎むことがない」という意味合いになります。
「遠慮のない」と「忌憚のない」であれば、「忌憚のない」の方が直接的にならず、遠回しに表現することができます。
「遠慮のない」だと配慮がない不躾な印象を与えがちですが、「忌憚のない」に表現を換えることで婉曲的に相手へ伝えることができます。
「忌憚」という熟語はあまり見たことのない漢字が使われていますが、それもそのはず、「憚」という字は常用漢字ではないので多くの人の目に触れるような文書では使用を控えた方が良いでしょう。
文章に書き表すことはなるべく控え、口語表現として活用しましょう。
ちなみにこの言葉は、中立的な表現として目下から上司等の目上の方など幅広く使っても良いとされています。
しかしながら「遠慮や配慮がない」という失礼な意味合いに捉えられやすい言葉ですので、自分よりも上位の相手へ使う場合には「恐縮ですが」等のクッション言葉を併用して伝えた方が無難です。
- 「忌憚のない意見」の読み
「忌憚のない意見」の読み
「忌憚」とは「きたん」と読みます。
「忌憚」のみで使われることはほぼなく、否定語を伴って使われることが多い言葉です。
同じ読みで異なる漢字と意味を持つ「奇譚」と混同しないよう注意しましょう。
「忌憚」は遠慮、「奇譚」は奇妙な物語を表す全く意味の異なる語句です。
また、先述しましたが「忌憚」だけでは使用することが非常に稀な表現ですので、「忌憚」を使う場合は必ず否定語をともなった「忌憚ない」や「忌憚のない」という形にしましょう。
「忌憚のない意見」の類語
「忌憚のない意見」について、同じような表現を持つ類語が他にも存在します。
代表的な3つの表現を見てみましょう。
- 「率直な意見」【そっちょくないけん】
- 「露骨な意見」【ろこつないけん】
- 「腹蔵のない意見」【ふくぞうのないいけん】
「率直な意見」【そっちょくないけん】
「率直」とは、自分の気持ちを偽ったり隠したりせず、ありのままでいることを表す語句です。
似たような言葉に「正直」や「素直」が挙げられますが、「率直」とは若干ニュアンスが異なります。
前者は「ひねくれておらず実直」といったような性質を表す表現として使われ、後者は「物事に対して包み隠さずさらけ出す」という様子を指し示す言葉です。
「忌憚のない意見」と同様、遠慮や慎みといった配慮はなく頭に思い浮かべたままポンと口に出すようなイメージです。
「彼が提示した意見に違和感を覚え、率直な意見を述べた」
「露骨な意見」【ろこつないけん】
「忌憚のない意見」と比較すると、幾分失礼さが増した言葉です。
「露骨」とは、「相手の思惑を気にせず表に出す」という意味を示します。
つまり、「露骨な意見」とは、一般的に自粛したり差し控えるような言いづらい事をあえて主張するような意見という事です。
誰しも人間関係や職務の階級、年齢など相手の立場を考えて自信の気持ちや考えを伝えますが、その配慮や考慮なくあるがままにさらけだす様子が表れている言葉です。
「忌憚のない意見」は単に「遠慮しない」という意味であることに比べ、「露骨な意見は」やや気遣いや配慮に欠けた空気を読まない指摘に近い意味合いです。
「上司にも関わらず、露骨な意見で反対の意思表示をした」
「腹蔵のない意見」【ふくぞうのないいけん】
「〜ない」という否定語を伴う、言葉の形も「忌憚のない意見」と似ている表現です。
それぞれ「腹」という字には心、「蔵」とは物を中へ入れると言う意味があります。
例えば心の中を「腹の内」と言ったりしますね。
そこから、「腹蔵」とは「心の中に包み隠して表に出さない」という意味を示す言葉で、それに否定語の「ない」がつくことで「包み隠さず表に出す意見」という表現となります。
「本音をさらけ出す」にとても近い表現です。
腹のうちに抱える意見や気持ちをというのは、躊躇いや遠慮があっては絶対に口に出せません。
その躊躇いや遠慮を乗り越えてそのままさらけ出す、という点が「忌憚のない」の類語と言えるでしょう。
「君が思う、福蔵のない意見が知りたい」
「忌憚のない意見」の使い方
「忌憚のない意見」という言葉や語句の並びから感じ取れるように、ビジネスシーンで頻繁に活用されている表現です。
例文を参考に取り入れてみましょう。
- 「忌憚のない意見」の例文1
- 「忌憚のない意見」の例文2
「忌憚のない意見」の例文1
「問題点について忌憚のない意見を集めたい」
例えば何かの事柄に問題が発生した時、立場や権力に偏った考えでは解決に至ることができません。
誰もが言いにくい事、通常であれば避けて取りあげないような指摘が必要となる場合もあります。
そういった誰しもが発言を控えたいと思うような事に対して、あえて主張してほしいと促す際には「忌憚ない意見」という表現が最も適した表現と言えます。
「少しばかり失礼であっても構わないから聞きたい」という気持ちを暗に示しています。
「忌憚のない意見」の例文2
「本日は忌憚のない意見を聞かせてください」
現状を打破したりよりよい状況へと好転させるには、社交辞令や忖度などの遠慮した意見だけでなく、問題点を洗い出すためのストレートな意見が必要となる場合があります。
よく、企業が顧客向けにアンケートを取ったりする際に「忌憚のない意見」という表現を使うのはこのためです。
人間の心理的に「悪いところを教えてください!」と言われたとしても、自分が発した意見に悪い印象を抱かれるのを恐れる人が多く、媚びた意見だけを述べて本音を明かすことを避けてしまいがちです。
その、遠慮を取り払って奥底にある真の考えをさらけ出してほしいときに、あえて婉曲的な表現である「忌憚のない」を使うことで、発言する側に余計な遠慮をさせず自然と本音を引き出すことが容易になる効果があります。
「忌憚のない意見」の英語
“frank”や“frankly”が非常に近い意味合いの英語表現となります。
カタカナ英語としても「フランク」という言葉を使用している人は多く、耳にしたことがあるはずでしょう。
その意味は「気を遣わない」「(人、意見、態度が)遠慮しない、隠し立てしない」というもので日本語の「忌憚のない」という表現とほぼ変わらない意味を持つ英単語です。
類語としても先に挙げた「率直に言うと」という表現も、“frank”を使って“frankly speaking”と表すことができます。
「忌憚のない意見」の言い換え
「忌憚のない」は意見とセットにしないといけないわけではありません。
「忌憚」に否定語を組み合わせれば色々なシーンで活用できるとても便利な語句です。
3つの例をもとに、語彙力の幅を広げていきましょう。
- 「忌憚なくおっしゃってください」
- 「忌憚なく申し付けください」
- 「忌憚ないご意見をお寄せください」
「忌憚なくおっしゃってください」
「遠慮なくおっしゃってください」という会話表現を少し婉曲的にした表現です。
直属の上司など目上の人に使うのにはあまり適しませんが、意見しづらそうな立場の人へ自然に「遠慮することはありませんよ」と促すことができる言い方です。
「忌憚なく申し付けください」
「遠慮なさらず」と非常に近いニュアンスの言い換えです。
「忌憚なく」自体は中立的表現として立場問わず幅広く使っても良いとされてはいますが、その言葉が持つ意味合いが「無遠慮」「不躾」というイメージが強いものです。
通常であれば控えてしまったり、慎むようなことも「躊躇せずに言ってほしい」ということを丁寧でやや格式ばった表現で相手に伝えたい場合に「忌憚なく申し付けください」と置き換えることができます。
「忌憚ないご意見をお寄せください」
企業がユーザーや顧客に対して、クレームや批判などのネガティブな意見を集めたい場合に使われる頻度の高い表現です。
自社が提供するサービスや運用に対して、自然に感じたままの意見を述べてほしい、つまり「遠慮せずに文句を言ってほしい」と暗に示している表現です。
直接的に「文句もOKです」と促されて正直に発言できる人は多くありません。
特に日本人は自分の意見を主張するよりもまわりと同調したり、協調性を大事にする傾向が高い種族とされています。
「いいのかな」と戸惑ってしまう気持ちをほぐし、本音を引き出すのに適した表現です。
ビジネス用語というのはどうしても専門的になりがちで、普段の生活ではあまり耳にする機会がないものがほとんどです。
「忌憚なく」という言葉についてなんとなく使っていた人も、誤用することなく正しく使いこなせるように深く理解して頂けたなら幸いです。
是非普段の生活やビジネスシーンで活用してみてくださいね。