「薫陶」の意味・類語・対義語【使い方や例文】
日本語の中には色々なジャンルの言葉がありますが、ことわざや四字熟語などの昔から伝わってきた表現もあれば、最近ではインターネットの普及とともに生まれてきたネットスラングやカタカナ語と多岐に渡っています。
しかし、今でも時々、古い言葉を使ったり聞いたりすることも少なくありません。
特に、ビジネスシーンでも日常生活でも、自分では普段使うことがなくても、周りの人々が使っている言葉も多いはずです。
その中でも、「薫陶」という言葉は、今の若い世代の人達はあまり使うことが少ないかもしれませんが、高齢者の方々は使う機会が結構あるのものです。
しかし、「薫陶」という言葉の意味やニュアンスは、使われるシチュエーションによって異なってくることもありますので、元来、どのような意味だったのかも含めて、この言葉の内容をしっかりと憶えておきたいところです。
目次
- 「薫陶」の意味とは?
- 「薫陶」の類語
- 「薫陶」の言葉の使い方
- 「薫陶」を使った例文・短文(解釈)
- 「薫陶」の英語
- 「薫陶」の語源
- 「薫陶」を使った言葉と意味を解釈
「薫陶」の意味とは?
「薫陶」という言葉の意味は、「自分の徳で他人を感化すること」、あるいは「優れた人格で教え育て上げること」ということになります。
優秀な人材を育成するためには、多くの研修や教育を行い育てることになりますが、「薫陶」では、ただ教育するのではなく、人格面を含めて道徳的な教育まで行い、しかも細かな指導をしなくて、自分自身の徳の力によって人を感化し育てることになります。
昔の「偉人」と呼ばれている人や、日本の歴史を大きく変えていった人達は、直接、自分が手取り足取り教育するのではなく、その人の考えや行動を見て、感化されていった若い人達がいました。
そのことがまさに「薫陶」という言葉が当てはまる場面ではないかと思います。
- 「薫陶」の読み方
「薫陶」の読み方
「薫陶」は「くんとう」という読み方になります。
「薫陶」の類語
「自分の徳で他人を感化すること」、「優れた人格で教え育て上げること」という意味を持つ「薫陶」と同じ、あるいは似たような意味を持つ類義語としては、次のような言葉が挙げられます。
- 「尊敬」
- 「指導」
- 「しつけ」
- 「啓発」
- 「教化」
- 「感化」
- 「教育」
「尊敬」
「薫陶」の類義語として、すぐに思い浮かべる言葉は「尊敬」でしょう。
「他人の人格や行為を高いものと認め、頭を下げるような」、あるいは「ついて行きたいような気持になること」という意味を持つ言葉です。
「偉人」と呼ばれる人々は、その人の思想や行動、人格を含めて、多くの人達からの人望を集めていたのですが、これが「尊敬」というものでしょう。
「指導」
「指導」とは、「ある目的に向かって教え導くこと」という意味になりますが、通常の「指導」というと、教師や講師、あるいは上司の立場にいる人が生徒を教えるというイメージになりますが、「薫陶」から見る「指導」とは、「無言の教育」という形になるでしょう。
「しつけ」
「しつけ」も、ある意味「薫陶」の一部の意味を持っている言葉として理解できるかもしれません。
この言葉の意味は「礼儀・作法を教え込むこと」ということになります。
「啓発」
「啓発」とは、「無知の人を教え導き、その目をひらいて、物事を明らかにさせること」ということになります。
「教化」
「教化」も「人を教え、よい影響を与えて善に導くこと」という意味を持っていますが、「薫陶」に最も近い意味を持っている感じがします。
重要なポイントは、「善に導くこと」という点で、「薫陶」のいい意味がこの言葉と似ている点と思います。
「感化」
「感化」も「教化」と同じように「人に影響を与えて、心・行いを変えさせること」という意味があり、「薫陶」の類義語として挙げることができますが、「感化」の場合は、いい意味でも悪い意味でも使われることがあります。
「彼の悪趣味に感化されてしまった」
などと使う場合は、あまり良い印象を受けません。
「教育」
「教育」も「指導」と同じ意味で。
「教え育てること」という意味になりますが、「薫陶」のように、直接的な指導を行わない点が異なります。
「薫陶」の言葉の使い方
「薫陶」の使い方で注意することは、「教えていただいた」という受け身の時に使うということです。
「私は部下に薫陶を与えた」といったような使い方はあまりしません。
このような言い方をすると、自分のことを相当な人格者というニュアンスになってしまし、「自尊心の高い人」か「自惚れの強い人」と受け取られてしまいます。
どちらかというと、「薫陶を賜る」と言ったような使い方がポピュラーかもしれません。
ビジネスシーンやかしこまった場面での挨拶、お礼状などの書面で使われることがあります。
なお、「薫陶を与える」も自分の行動で使うことがふさわしくなくても、第三者的な人のことを示している場合は、変な印象を与えることがないので問題はありません。
「先生は生徒たちに薫陶を与える」といった使い方ですが、「薫陶を授ける」という使い方もあります。
「薫陶」を使った例文・短文(解釈)
では、「薫陶」を使っている例文を見ながら、どのような場面で使用できるかを理解していきましょう。
- 「薫陶」の例文1
- 「薫陶」の例文2
- 「薫陶」の例文3
「薫陶」の例文1
「最後までつつがなく任期を全うできたのも、皆様のご薫陶とお力添えのおかげでございます」
このようなセリフは、政治家が任期を終えた時に使われます。
ここで言う「薫陶」とは、「支援者の協力や理解」といった感じがするので、「徳で他人を感化すること」という本来の意味とは、ニュアンスが異なっています。
しかし、自分をへりくだって、このような使い方をすることもできます。
「薫陶」の例文2
「課長のこれまでの薫陶に心より感謝申し上げます」
課長の高い人格による無言の教育で、自分がここまで成長できたことを感謝している言葉でしょう。
しかし、今のビジネス社会では、新入社員は、研修や教育プログラムが前もってお膳立てされていないと自分の判断で、何もできないというタイプの人も少なくありませんので、高い人格だけで若い人を教育することが難しい時代かもしません。
「薫陶」の例文3
「薫陶を与えたとして、彼は時の人となった」
多くの人に大きな影響を与えたとして、時の人となったのですが、今風に言うと、「カリスマ的な存在」と言える人かもしれません。
「薫陶」の英語
「薫陶」を英語で表現すると、「訓練」という解釈なら、“discipline”、“training”となりますし、「教育」という意味で英訳するなら“education”がふさわしいでしょう。
動詞形では、「薫陶する」は“discipline”、“drill”、“train”、「教育する」は“educate”、“breed up”となります。
また、「薫陶を受ける」という言葉を英訳すると、“be under somebody's tutelage”や“study under”となります。
「薫陶」の語源
では、「薫陶」をいう言葉がどのような経緯を経て生まれてきたのか、その語源を考えてみることにします。
「薫陶」の中に含まれる「薫」は「香を焚きこむ」、「陶」は「陶器をつくる」という意味があります。
陶器は、香の薫りを染み込ませながら、土をこねて形を整えて作っていく過程を踏んでいきますが、人に対しても、「徳を染み込むように感化させて人格がより良く形成していくよう整える」という意味合いが込められていることから、「薫陶」という言葉が使われるようになったのです。
しかも、先述の通り、ただ教育や指導するだけではなく、道徳心や優れた人格に感化・影響され教え育つこと」という崇高とも言える意味まで含んでいるので、この言葉を全ての意味を包含した同義語は他にないかもしれません。
「薫陶」を使った言葉と意味を解釈
では、「薫陶」を使った言葉も見ていくことにしましょう。
- 「薫陶を受ける」
- 「恩師からの薫陶」
「薫陶を受ける」
「薫陶」は、主に「薫陶を受ける」という表現が最も多い用法でしょう。
意味は「人徳や品格のある人から影響され、人格が磨き上げられる」となりますが、感化されたり、影響を受けたことを丁寧に表現している言葉です。
目上の人や感銘を受けた人に対して使われる言葉ですが、対象となる人の偉大さも同時に物語っている意味合いも込められています。
「恩師からの薫陶」
「恩師からの薫陶」もよく挨拶や感謝の文書で使われる言葉です。
高校、大学と自分の育ててくれた恩師が1人、2人はいると思いますが、その人に対する尊敬の念も込められていますね。
「薫陶」という言葉の意味を知ると、自分に大きな影響を与えてくれた人がどれだけいるのかと思う人もいるでしょう。
今話題の西郷隆盛は、「薫陶」をイメージさせる人物の1人かもしれませんが、今、自分の人生を振り替って、そのような人が自分にいたのかを考えてみることも面白いかもしれません。