「造詣が深い」の意味とは?類語や使い方、例文を紹介!
「造詣が深い(ぞうけいがふかい)」という言葉をよくテレビなどで聞いたりします。
なんとなく「知識が広いことを意味しているのかな。」
などと、意味について察しがつきますが、実はこの意味は非常に意味が限定されています。
目次
- 「造詣が深い」の意味とは?
- 「造詣が深い」の類語や言い換え
- 「造詣が深い」の使い方
- 「造詣が深い」の例文
- 「造詣が深い」の「造詣」の意味は?
- 「造詣が深い」の英語
- 「造詣が深い」の反対語
「造詣が深い」の意味とは?
「造詣が深い」の意味は、「特定の分野に深い知識や技量を持ち、非常に精通していること」を意味します。
ここで「特定の分野」についてですが、勘違いしやすいのは、特定の分野であれば何の分野でもいとわないのかということです。
答えは、特定の分野といっても、何の分野でも良いわけではありません。
限定された分野についてのみ、示す言葉となっています。
ここがこの言葉を使うときの、非常に紛らわしい点でもあります。
「特定の分野」の意味を紐解くと、学問や芸術、技術などのアカデミックなものにのみ使う傾向が見られます。
そのため、「どれだけプリンの種類を知っているか」「どれだけ特定のキャラクターの雑学を知っているか」といった、子供騙しのような分野には使いません。
アカデミックな分野といえる、芸術や学問、技術について非常に特化していること、詳しいことを意味しています。
また「深い」は非常にその知識が深い様子を表す言葉となっています。
「造詣が深い」の類語や言い換え
「造詣が深い」の類語や言い換えについてみていきましょう。
- 「精通している」【せいつうしている】
- 「スペシャリスト」【すぺしゃりすと】
- 「うんちくを傾ける」【うんちくをかたむける】
「精通している」【せいつうしている】
「精通している」の言葉の意味は、「どのようなことにも全てにおいて詳しいこと」を意味します。
「造詣が深い」と同様、知識が豊富にあって優れている様子、知識が深い様子を表しています。
ただし、「造詣が深い」は、かなり限定的な分野に限って知識が深いことを意味するのに対し、「精通している」は、全てのことに対して広く知識を持っており、その知識が深いことを意味する言葉です。
「造詣が深い」は限定された分野、「精通している」は全ての分野において万能であることを意味しています。
ここに「造詣が深い」と「精通している」の言葉の意味に違いがあります。
「精通している」も似たような言葉なので、つい「造詣が深い」と同じような使い方をしていまいがちですが、正しくは違うので使うときは注意しましょう。
例文としては、「雑学王と呼ばれる彼は、どの分野にも精通しており、どの問題もあっという間に答えてしまう。」
(雑学王と呼ばれる彼は、どの分野にも知識が深く、どの問題もあっという間に答えてしまう。)などが挙げられます。
「スペシャリスト」【すぺしゃりすと】
「スペシャリスト」の意味はよく理解している人は多いのではないでしょうか。
「ある特定の分野に非常に長けている人のこと」を意味しています。
「○○のスペシャリストの人です。」
などと紹介する場面を一度は見たことがあるのではないでしょうか。
「スペシャリスト」は「造詣が深い」と同様、「ある分野において非常に長けている様子」を表している点で非常に似ているといえます。
ですが、少し違うのは、「造詣が深い」はある特定された分野にのみ使う点です。
先ほども説明をしましたが、芸術や学問、技術といったアカデミックな分野においてのみ表現する言葉です。
それに対し、「スペシャリスト」は分野を問わない傾向があります。
例えば、ゴキブリ退治を生業にしている人のことを「ゴキブリ退治のスペシャリスト」などと表現することもありますし、掃除のプロのことを「掃除のスペシャリスト」などと表現することがあります。
決して「ゴキブリ退治に造詣が深い人」「掃除に造詣が深い人」などという言い方はしません。
この点において、「スペシャリスト」と「造詣が深い」の使い方に、違いがあります。
「うんちくを傾ける」【うんちくをかたむける】
「うんちくを傾ける」は、「深い知識を、次から次へとひけらかす」という意味です。
「うんちく」は深い知識のことを指しますが、「傾ける」が「ひけらかす」という意味になるとは、なんだかしっくりときません。
なぜ、「傾ける」が「ひけらかす」という意味になるのでしょう。
「傾ける」という言葉は、もともと「傾くように斜めにすること」を意味しています。
ワインを斜めに持つことを「ワインを傾ける」などと表現しますが、そういった物事を斜めにすることを「傾ける」と表現しています。
そして、この「うんちくを傾ける」の意味においては、その「うんちく」の知識が、まるでワインを斜めしたときにワインが次から次へとこぼれ落ちていくように、口から次々と出ていく様子が表現されています。
つまり、「傾ける」とは「次か次へと言葉として出ていくこと」を意味している比喩表現として使われています。
また、「うんちくを傾ける」の際に使う「傾ける」は、知識をひけらかすという非常にマイナスな意味を含んでいます。
「うんちくを傾けられて非常に迷惑だ。」
「飽き飽きしている。」
「うんちくをやめてほしい」というネガティブな感情が込められています。
例文としては、「彼はいつもこの話になると、うんちくを傾け始める。もう、もううんざりだ。」
(彼はいつもこの話になると、うんちくをひけらかし始める。もううんざりだ。)
などが挙げられます。
「造詣が深い」の使い方
「造詣が深い」の使い方についてみていきましょう。
「造詣が深い」の使い方をみていくと、3つのポイントがあることに気付きます。
- ある一つのことに特化している様子
- 特化している分野が芸術・学術・技術といったアカデミックな分野だけ
- 使う対象は人物であること
です。
上記のことを踏まえて、間違いのある例文を挙げてみます。
「ある一つのことに特化している様子」という点に反する例文を挙げるとすれば、「彼はこの全ての分野に造詣が深い。彼に聞けばどんなことでも答えてくれる。」などです。
これではある特定の分野に詳しい様子が表現されていません。
「特化している分野が芸術・学術・技術といったアカデミックな分野だけ」という点に反する例文を挙げるとすれば、「彼女はお料理に造詣が深い。いつも彼女の作るお料理は美味しい。」などです。
これでは学問的に詳しい様子が表現されていません。
「使う対象は人物であること」という点に反する例文を挙げるとすれば、全てのキャットフードの味が分かる猫について「この猫は全てのキャットフードに造詣が深い」などです。
これでは使う対象が人物ではなく動物です。
適切な表現とは言えません。
「造詣が深い」の例文
「造詣が深い」の例文についてみていきましょう。
- 「造詣が深い」の例文1
- 「造詣が深い」の例文2
「造詣が深い」の例文1
「彼女は日本絵画に造詣が深い。」
(彼女は日本絵画において、非常に深い知識を持っている。)
「造詣が深い」の使い方について説明しましたが、しっかりと3つのポイントをおさえています。
- 日本絵画の分野に特化している様子が分かります。
- 日本絵画というアカデミックな分野について話しています。
- 「彼女」というフレーズから人物であることが分かります。
以上、3つのポイントを押さえた適切な表現であると言えます。
彼女が非常に日本絵画の分野に優れ、有能である様子が理解できます。
また、その有能ぶりはなかなか右に出る物がいないほど優れていることを同時に表しています。
「造詣が深い」の例文2
「パソコンに造詣の深い彼なら、どんなハッキングにも対処できるだろう。」
(パソコンに非常に深い知識を持っている彼なら、どんなハッキングにも対処できるだろう。)
この例文も紹介した3つのポイントをしっかりとおさえた表現となっています。
- パソコンに特化している様子が分かります。
- パソコンの技術というアカデミックな分野について話しています。
- 「彼」というフレーズから人物であることが分かります。
ハッキングに対処できる彼とは、なかなかの技術者であると言えます。
そこまで優れた技術を持つ人は滅多にいません。
このくらい優れた技術を持つ人のことを「造詣が深い」と表現します。
誰でも簡単に持てるような技術に「造詣が深い」という表現は適しません。
「造詣が深い」の「造詣」の意味は?
「造詣」とは特定の分野に関する深い知識や見識などを表す言葉です。
そして、先ほどにも説明しましたが、「造詣」という言葉で表される分野はアカデミックな分野に限ります。
日常的な分野、誰でも持っているような分野、子供騙しのような分野には使いません。
例えば、掃除や料理、アイロンがけなどの分野に非常に詳しくても、「造詣が深い」人にはなれません。
「造詣」が指す分野は、他人が真似できない優れた分野を表しています。
お遊び程度のものには使いません。
「造詣が深い」の英語
「造詣が深い」の英語は何でしょう。
“have a deep knowledge about〜”「〜について理解が深い」などが挙げられます。
例文としては、“He has deep knowledge about culture.”(彼は文化についての知識が深い。)などとなります。
「造詣が深い」の反対語
「造詣が深い」の反対語を挙げるとすれば、「浅学非才」(せんがくひさい)などが挙げられます。
「浅学非才」とは、読んで字のごとく、「学問や知識が浅く、才能がない様子」を意味します。
「浅学」は浅い知識を、「非才」は才能がない様子を表す言葉です。
「造詣が深い」とは正反対の意味になります。
この言葉の特徴は、自分を謙遜するときに使われやすい傾向があることです。
自分をへりくだって見せるときによく使用されています。
例文としては、「浅学非才な私ですが、このプロジェクトが成功するように、より一層、力を尽くす所存です。」
(知識のない才能のない私ですが、このプロジェクトが成功するように、より一層、力を尽くす所存です。)
などが挙げられます。
「造詣が深い」という言葉が、アカデミックな分野にのみ特化した言葉であることを何人の人が知っていたでしょうか。
多数の人が知らなかったことでしょう。
間違って使っていた人は、ぜひ使い方を改めて正しい日本語を使いましょう。