「すこぶる」の意味とは?類語、反対語や使い方、例文を紹介!
言葉のなかには使用頻度の多いものと少ないものとがあり、「すこぶる」は頻繁に使われることのない言葉の一つだと言えます。
とくに若い人どうしの会話のなかでは、あまり登場しないのではないでしょうか。
あまり使われることのない「すこぶる」ですが、古くからある言葉で、大和言葉の一つです。
言葉のなかには昔は使われていたのに、今では使われなくなったものもあります。
また、言葉の形はのこっていても、意味は変わってしまったものもあります。
あるいは、昔からずっと意味も形も変わらずに使われ続けている言葉もあります。
「すこぶる」はどうでしょうか。
今回は、「すこぶる」の語源を含め、意味や使い方、類語等についてお伝えしたいと思います。
目次
- 「すこぶる」の意味とは?
- 「すこぶる」の類語
- 「すこぶる」の語源
- 「すこぶる」を使った例文
- 「すこぶる」の対義語は?
- 「すこぶる」の使い方(注意点)
「すこぶる」の意味とは?
「すこぶる」は、日常生活のなかで滅多に使われることのない言葉ですが、それは「すこぶる」が日常から離れた特殊な意味をもっているからではありません。
「すこぶる」の意味を知れば、この言葉がもっと使われてもいい言葉だと思われることでしょう。
「すこぶる」にはどんな意味があるのでしょうか。
また漢字で表す場合はどのように書くのでしょうか。
- 「すこぶる」は漢字で書くとどうなるの?
- 「すこぶる」の意味は?
- 「すこぶる付(つ)き」とは?
「すこぶる」は漢字で書くとどうなるの?
「すこぶる」は漢字では「頗る」と書きます。
「頗」には、「かたよる」とか「かたむく」、「公平を欠く」といった意味があります。
通常は、「頗る」と漢字で書くよりも、「すこぶる」とひらがなで表すことが多い言葉です。
「すこぶる」の意味は?
「すこぶる」は時代とともに意味も変わってきた言葉の一つで、「すこぶる」の意味は以下の二つがあげられます。
- たいそう。非常に。
- 少しばかり。いささか。
現在、「すこぶる」が使われる場合は、上記にあげた二つのうち「たいそう、非常に」の意味になり、ある物事の状態が予想以上の程度である様子を表すときに使われます。
一方、古文などで使われる場合には、「少しばかり」、「いささか」といった、現在使われている意味とは真逆の意味で使われています。
現代における意味と同じように使われるようになったのは少なくとも鎌倉時代くらいのようですが、意味が変わってしまった原因については今のところ、はっきりわかっていません。
よく知られている説としては、「少しばかり」という意味だったものが転換して「少なからず」に変わったとするものや、「少し」の意味をもつ漢字の「頗」を「すこぶる」と訓読みして使っていたところ、「頗」には「かなり多い」という意味もあったため、「たいそう」や「非常に」という意味をもつようになったとする説があります。
言葉の意味が反転することは決してめずらしいことではなく、わたしたちの身近でも起こっています。
たとえば「ヤバイ」という言葉は、本来は、「危険だ」とか「不都合だ」、「まずい」などの意味で使われていましたが、最近では全く逆の意味で使われることもあります。
「ヤバイ目にあった」といえば「危険な目にあった」を意味し、「それをするとヤバイことになるぞ」なら、不都合な状況を招くおそれがあると注意や警告を与えていることを意味しました。
ところが、「このクレープ、ヤバイ!」といった場合、クレープが腐っているわけでも、まずいわけでもなく、むしろ「このクレープおいしすぎる!」という本来の意味とは真逆の意味で使われることがあります。
「ヤバイ」という言葉が今後、どっちの意味に傾いていくのかわかりませんが、「すこぶる」もひょとすると、そのような流れのなかで意味の転換が起きたのかもしれません。
今は「たいそう、非常に」の意味で使われる「すこぶる」ですが、肯定的であれ、否定的であれ、ある物事について強調したい場合に使われます。
【例】調子がすこぶるよい。そんな話はすこぶる迷惑だ。
「すこぶる」は、普段、あまり使わない言葉ですが、非日常的な意味をもっているわけではなく、何かを強調したいときにはいつでも使える言葉なのです。
「すこぶる付(つ)き」とは?
「すこぶる」が上につくほどずばぬけていることを意味する「すこぶる付き」という言葉もあります。
例:「すこぶる付きの美人」で、「ものすごく美しい女の人」、「大変な美人」という意味になります。
「すこぶる」の類語
「物事の状態が予想以上の程度である様子」、「たいそう、非常に」といった意味をもつ「すこぶる」の類語を集めてみました。
- 非常(ひじょう)に
- 大変(たいへん)
- 甚だ(はなはだ)
- とても
- だいぶ
- かなり
- 大(おお)いに
非常(ひじょう)に
意味:程度がはなはだしいようす。
例文:「非常に残念だ」、「その器は非常に古い時代のものだ」
大変(たいへん)
意味:並みの程度をはるかに超えている様子。たいそう。非常に。
例文:「彼は大変驚いた」、「先日は、大変失礼いたしました」
甚だ(はなはだ)
意味:事態の程度が並みでない様子。非常に。たいそう。
例文:「はなはだけしからん話だ」、「はなはだ多い」
とても
意味:程度がはなはだしいさま。非常に。たいへん。
例文:「とてもきれいだ」、「とても楽しい」
だいぶ
意味:数量や程度が無視できないほど大きいさま。相当。(だいぶん、とも言います)
例文:「ここの生活にだいぶ慣れた」、「具合がだいぶよくなった」
かなり
意味:普通の程度以上であるさま。相当。
例文:「かなりの数にのぼる」、「かなり無理をしてきた」
大(おお)いに
意味:普通の程度をはるかに越している様子。非常に。はなはだ。
例文:「大いに飲もう」、「大いに考えさせられた」
「すこぶる」の語源
「すこぶる」は、少しを意味する「すこ」と、いかにもそれらしい様子をするの「ぶる」から成ります。
「すこぶる」の「すこ」が少しを意味しているように、当初は「少しばかり」とか「いささか」といった意味で用いられていました。
もともとは「少しばかり」の意味だったものが、どのような理由から現在のような逆の意味に変化したのか明らかになっていませんが、少なくとも鎌倉時代くらいからは現在のような使われ方をしていたようです。
「すこぶる」を使った例文
「すこぶる」をより理解するために、「すこぶる」を使った例文をいくつかあげてみたいと思います。
ところで、言葉の意味を調べるために辞書をひいたりすると例文が載っていたり、この記事のように言葉をテーマに扱ったもののなかには意味だけでなく、例文を載せているものが多いと思います。
それはなぜでしょうか。
まずは例文の意義から説明したいと思います。
- 例文の意義
- 「すこぶる」の例文
- 「すこぶる付き」の例文
例文の意義
例文に接することで、文章という現場で、その言葉がどのように使われているのかを知ることができ、意味とその使われ方を理解するのに役立つからです。
言葉というのは不思議なもので、意味だけを知っても使えないときがあります。
たとえば、「猛烈(もうれつ)」と「強烈(きょうれつ)」を例にとってみましょう。
「猛烈」には、「程度のはなはだしいさま」、「勢いの激しいさま」といった意味があり、「強烈」には、「力や作用、刺激が強くて激しいさま」の意味があります。
どちらも、「程度のはなはだしいさま、激しいさま」を表す言葉ですが、そこに全く差異はないかというとそうではありません。
この二つはどのように使い分けられると思いますか?
まず、例文を挙げてみたいと思います。
「猛烈」を使った例文:「猛烈な台風が紀伊半島沖を通過中」、「猛烈な勢いで追い越す」、「猛烈な攻撃」
「強烈」の例文:「強烈な印象」、「強烈なにおい」、「強烈な色」
例文を見てもわかるように、「猛烈」の後にくる言葉には、「勢い」や「台風」、「攻撃」などのように、力強さや勢いなどの性質を含むものが来ます。
一方、「強烈」の場合は、「印象」や「色」のように、それだけでは強さや勢いの意味をもたない言葉が来ることが多いようです。
たとえば「強烈な色」、「強烈な顔」とは言っても、「猛烈な色」、「猛烈な顔」とは言いません。
「猛烈」それ自体には強さは表せないため、「猛烈な色」といっても色自体に勢いや強さがあるわけではなく、何が猛烈なのかわからないことになるのです。
「攻撃」や「台風」、「勢い」などのように、「猛烈」を使わなくても、もともとそれ自体に強さをそなえているものにつくことで、「猛烈」という言葉は効果をあげる役割があります。
言葉の意味は辞書を調べれば大方わかりますが、微妙な差異(使い分け)をする言葉もあり、それらの使い分けを知るためには、それらが使われている現場(文章)に多く接することが必要になります。
辞書が、言葉の意味だけでなく例文を載せているのもこのためです。
それでは、「すこぶる」の例文をみていきましょう。
「すこぶる」の例文
- 「書き上げた作品を読み返してみて、その出来にわたしはすこぶる満足した」
- 「出ている俳優や女優は大物ばかりだったが、あの映画の評判はすこぶる悪い」
- 「すこぶるうまいコーヒーを淹れてくれ」
- 「君に問題意識がないみたいだから言うが、状況はすこぶる悪くなっているのだ」
- 「そんな話をもってこられてもすこぶる迷惑だ」
- 「(物事が調子よく運んで)すこぶる愉快!」
「すこぶる付き」の例文
- 「彼女は、彼の両親からすこぶる付きの歓待を受けた」
- 「今思い出しても、あれはすこぶる付きの贅沢な船旅だった」
- 「その町ではすこぶる付きの悪党として彼は知られていた」
「すこぶる」の対義語は?
対義語は反対語、対語ともいい、「右」と「左」、「生」と「死」、「売る」と「買う」のように、何らかの意味で対立する対(ペア)になるような言葉をいいます。
「すこぶる」には、「たいそう。非常に」という意味がありますが、「非常に」という意味に着目した場合、「非常」の対義語には「平常」もしくは「通常」があり、「すこぶる」の対義語ではありません。
また、対義語については、程度の著しさを表す副詞には対義語がないのが一般的で、「すこぶる」の場合、これに当てはまります。
「程度の著しさを表す副詞」には、「すこぶる」の類語として取り上げた「甚だ」や「大変」、「だいぶ」、「かなり」、「とても」、「大いに」などもこれに当てはまり、これらの言葉にも対義語は存在しません。
「すこぶる」の使い方(注意点)
ネットなどで、「すこぶる動く」とか「すこぶる好き」といった使われ方をしているのを目にします。
はたしてこれは正しいのでしょうか。
「すこぶる」は「たいそう。非常に」という意味をもつ副詞です。
副詞とは品詞の一つで、動詞や形容詞、形容動詞などの用言を修飾する言葉です。
「すこぶる」も副詞ですが、「動く」や「好き」といった動詞よりも、「静かだ」、「元気だ」などの形容動詞や、「良い」、「悪い」、「美しい」などの形容詞を修飾するのが一般的です。
「すこぶる動く」で「すごく動く」、「すこぶる好き」で「すごく好き」という意味になり、必ずしも間違いではありませんが、一般的な用法からは外れていることに注意しましょう。
「すこぶる」ははるか昔からわたしたちの祖先も使っていた言葉の一つです。
最初は、「少しばかり」とか「いささか」といった量や程度がわずかであるさまをあらわしていましたが、今ではまったく反対の意味をもつ言葉として使われています。
あまり使われない言葉ですが、意識すれば「すこぶる」の使える場面はけっこうありそうです。
生活の中のちょっとした場面で、そのときの気持ちやそのときの物事の状態の程度がとても大きなものだったとき、「すこぶる」を使ってみるのもいいかもしれません。
きっと、同じ状況をあらわすのでも、言い回しの違いによって、また一味違う雰囲気を言葉に添えることになるでしょう。